民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲
1 財産分与
離婚をするとき、夫婦の財産関係を精算する場合があります。その際夫婦の一方から他方に対し、財産を譲渡することがあります。これを財産分与といいます。
2 財が動けば税が生じる
当然のことですが、財が動けば税が生じます。
3 譲渡所得税の発生
財産分与をし、そこに所得が生ずれば、その所得に税金が課されます。この税金は所得税ですが、これが財産の譲渡にかかる所得税であることから、専門家の間でも、しばしば譲渡所得税と言われます。
3 譲渡所得税は、財産を譲渡した方に課せられる
一般の人には、理解し難いところと思いますが、財産分与の場合、財産をもらった方ではなく、財産を譲渡した方に譲渡所得税がかかります(最高裁昭和50.5.27判決)。その理由は、財産分与をすれば、財産分与義務が消滅するという利益が生じる。この利益は財産を分与した対価として考えることが出来る。であるから、財産の譲渡の対価である譲渡収入が財産の取得費を超えておれば、そこに譲渡所得が発生し、所得税が生ずる、というものです。
4 財産分与をした方に譲渡所得税がかかることで、分与者に思わぬ不利益が生じたときは、財産分与契約を、錯誤を理由に無効だと主張できる
前記最高裁判決の事例は、夫が妻に高額の土地を財産分与した事例ですが、この財産分与の時、夫は、自分に税金がかかるなど夢想もせず、むしろ財産をもらい受ける妻に税金がかかると誤解して、妻に対し、「お前には、税金がたくさんかかるのでたいへんだなあ」と心配したくらいでした。
この事件は、最高裁で差し戻され、差し戻し審である東京高裁平成3.3.14判決で、この財産分与は、錯誤により無効であると判示され、財産は夫の手に戻りました。
錯誤とは、自分に税金がかかるのに、相手方に税金がかかると勘違いしたことです。