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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

走り過ぎで男性ホルモン低下?

2017年10月18日

テーマ:医療界の新発見?

コラムカテゴリ:医療・病院

走り過ぎで男性ホルモン低下?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘走り過ぎで男性ホルモン低下?’という報告です。
 よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックの奥井先生は、マラソンなどのスポーツ大会で心停止などを起こしたトラブル症例の検討から、「スポーツ大会での心停止は日常生活での過剰な運動による低テストステロン症が原因」とする仮説を報告した。トラブル症例の特徴として、有意なテストステロンの低値、有意に多い運動量、睡眠と性機能の障害が判明したことから、今回の仮説を立てた。同氏は新たな概念として「運動ストレス性低テストステロン症」を提案、スポーツ大会での心停止のハイリスク症例を事前に予測する指標としてテストステロンが有効である可能性があるとしている。
 同氏は、自身が医療班として参加したスポーツ大会でトラブルを起こし、外来受診を促した参加者のうち、同クリニックを受診した40歳代、50歳代の60例についてテストステロンなどを調べた(トラブル群)。過去3カ月間とスポーツ大会でけがの経験がない健常者(正常群:20例)、同クリニックに通院中の加齢男性性腺機能低下症候群(LOH)の患者(LOH群:10例)と比較した。その結果、日常の運動量(走行距離)は正常群150km/月、LOH群46 km/月であるのに対しトラブル群では250km/月と有意に多かった。また、トラブル群は他の2群に比べ総テストステロンが有意に低かった。LOHの診断に使われる症状質問票のスコアはLOH群で全般的に点数が高く問題を抱えていたが、トラブル群は睡眠と性機能のみで点数が高い特徴があった。
 同氏はこうした知見から運動ストレス性低テストステロン症という概念を立て、該当する患者をさらに検索した。心電図上の変化は乏しいため事前に見つけることが困難などの特徴も明らかになった。また、3カ月安静にすることでテストステロン、貧血、症状質問スコアが正常化することも分かった。同氏は、日常的な過剰運動が心臓に負担をかけるとともに低テストステロン症を引き起こし、低テストステロン症が性機能の低下を招いたと推測。低テストステロン症がなんらかの影響を与え、スポーツ大会での心停止を引き起こしたと考えている。
 イタリアからの報告では、事前の心血管スクリーニングで特定の人を運動制限させることでスポーツ大会での突然死を25年間で10分の1に減少できた。同氏は、性機能の問診がハイリスク例のスクリーニングに使えるのではないかとしている。
 何事も過ぎたるは及ばざるがごとしですね...

17.10.17 花々

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