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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

胃アニサキス症に正露丸?

2018年8月2日

テーマ:医療コラム

コラムカテゴリ:医療・病院

胃アニサキス症に正露丸?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は’胃アニサキス症に正露丸?’というお話です。

 先日、とんでもないニュースを見つけてしまいました。あの正露丸がアニサキスに効くというものです。正露丸を製造販売する大幸薬品が、2014年に「消化器アニサキス症用薬剤」の特許を取っていたということで話題になりました。正露丸の主成分の木クレオソートはブナやマツなどの原木を乾留して得られる木タールを精製した淡黄色透明の液体です。腸管内の水分調節機能を調整する働きがあるとされます(。このニュースは、そんな正露丸がアニサキスの症状改善あるいは予防ができるということで特許を取ったというものでした。

 実は以前、木クレオソート投与により疼痛が改善したアニサキスの2例が報告されていました。実験では、アニサキスに正露丸を暴露すると、用量依存的に虫体の活動が抑制されたということです。症例報告なのでエビデンスレベルとしてはちょっと乏しいかもしれませんが、アニサキスの活動性が低下することに再現性があるとなるとおもしろい報告です。痛みについては、もともとアニサキスが噛み付いたことによる痛みともいわれていたようですが、アレルギー反応の一環で疼痛を誘発するのではないかという考えが主流になってきています。内視鏡で取り除けばアレルゲンを除去できるわけなので、内視鏡で虫体を取り除くと、結構短時間で患者さんが楽になったと言ってくれます。

 アニサキスの除去には、結構繊細な技術が求められます。胃粘膜に噛み付いているため、引っ張ると身体がちぎれ、頭部だけが胃粘膜に残ってしまうということになりかねません。そんなアニサキス、結構引っ張ったらすぐにもげるようなのですが、噛み切るというのは難しいみたいです。アニサキス対策として「よく噛んで食べる」とまことしやかに囁かれることがありますが、固くて噛みきれないのです。

 いざアニサキスにやられたとき、内視鏡処置はすぐにどこでもできるわけではないので、痛みだけでも緩和できるのはありがたいことかもしれません。近年、抗アレルギー薬の投与が症状緩和に有効であることも言われておりますので、医師としては薬機法に則った正攻法で対応しつつ、今後の正露丸の動向を見守りたいと思います。
*薬師寺泰匡先生(岸和田徳洲会病院救命救急センター)の医療コラムを抜粋し、一部改変

 当クリニックでもここ数年、胃アニサキス症の患者さんが増えてきています。今シーズンは特に初鰹の時期には集中して患者さんが来院なさいました。上述されている様にアニサキスが胃の粘膜に噛み付くことによって症状が出るのではなく、寄生虫に対するアレルギー症状としての痛みが出ている様です。ですから典型的にはアニサキスの摂取後に蕁麻疹様のアレルギー症状が出た後にみぞおち付近の症状が出る様です。今の時期には患者さんはおられない様ですが、注意は必要かと思われます。

この記事を書いたプロ

佐藤浩明

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佐藤浩明(さとうクリニック内科・消化器科)

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