うつ療養中の過ごし方 ①回復までの変化と必要条件
うつ病になっても、その辛さを家族に理解してもらうには時間がかかります。
思いやりのある家族であっても、すんなり受け入れることは難しいし、「分かっているよ」と言ってもそれがうつ病本人が求める理解とはずれていることもあるでしょう。
うつ病の辛さを家族に理解してもらうためには、どうすればいいでしょうか。
前提:うつ病本人とそれ以外の溝
まず、うつ病になった本人と、それ以外の人たちとでは、物の味方や感じ方が全く違う、という前提があります。
そしてそれは家族であっても同じでしょう。
しかし家族は一緒に生活しているので、ズレているままでは生活に支障が出てきます。
家族側からの「理解しよう」という姿勢だけでは不十分です。
うつ病本人側からの「こんな状態にある」という発信も大事です。
では、うつ病本人側からはどんな発信が必要でしょうか。
ケース①:日常生活が滞ることへの理解
うつ病になると、衣食寝の全てが億劫になります(らしいです。私も自分がうつ病になったことはないので、家族や経験者の話からの想像です)。
眠いわけではなくても横になっていることしか出来ないし、空腹も、他人事のように感じることはあっても「食べたい」という意欲は感じません。しかし家族が「何か食べないと」と言ってくる気持ちもわかります。
例えば食事を例に取ると、本当に何も食べたくない、という時もあるでしょうが、「要らない」「食べたくない」という返事だけではなく、
- 胃がもたれて食べられない
- 脂っこい食事を想像すると食べたくなくなる
- ○○なら食べられるかもしれない
- 今は無理だけど後でなら食べられるかも
- 食べることを考えると○○のように感じて辛い
など、「食べられない」気持ちをもう一歩踏み込んで説明してみるといいかもしれません。
ポイントは、出来るだけリアルに家族が「食べられない」気持ちを想像できるように。
同様に、お風呂に入れないことや、朝起きられない、外へ出るのが怖い、というのもうつ病の人にしか分からない理由での「出来ない」ですから、何がどのようになって・感じていて出来ないのか、を説明してもらえると参考になります。
ケース②:将来について考えるのが怖いことへの理解
うつ病は薬を飲んでゆっくり休めば数カ月で回復する、というのが一般的な見解です。
しかし誰もがその通りの経過を進むわけではありません。
うつ病の底にいる本人にとっては、その見解に則って「あと○ヶ月で復職なんて出来るだろうか」と考え、余計辛くなってしまいます。
そのような状況で「将来・これからどうするの」と聞かれても答えられるはずないですよね。
しかし家族側からすれば、将来どうなるのか、は非常に大きな問題ですし、本人がどうするつもりでいるのか、が分からないままでは何も決められません。
主治医に聞いたところで明確なことは分かりません。だから本人に聞くしかないのです。
うつ病本人の「今どんな状態で、先のことを考えることが辛い、それは~~だからだ」という発信が無ければ、家族は動けません。サポートも出来ません。
うつ病本人は、決定する必要も責任を持つ必要もありません。家族は今のリアルな状態や考えを知りたいのです。今後どうしていくか、を考えるために一番重要な情報が「うつ病本人の気持ち」だからです。
ですので「将来どうするの」は、追い詰めるつもりも言質を取るつもりもありません。情報収集です。安心して話してもらいたいです。
ケース③:死にたい気持ちへの理解
うつ病と「死にたい」という気持ちは切っても切れません。気持ちだけではなく、行動してしまうことも十分あり得ます。
「死にたい」は行動化の可能性を含んだ、辛さを凝縮した言葉なのだろう、と思っています。
死にたい、生きていたいと思えないほど辛い、苦しい、疲れた、という思いが込められているのでしょう。
でも家族には最初それが分かりません。家族(うつ病ではない人)にとって「死」はとても遠いもので、出来れば関わりたくない忌み語だからです。だからそれを言われると反射的に拒否してしまうのです。
家族側が「死にたい」気持ちに向き合う覚悟を固めることが前提にはなりますが、「死にたいと普通に考えてしまうくらい辛いし、先の人生に価値を感じられていない」状態であることを、ご自身の言葉で話してもらいたいです。
家族側はこの先も生きることを前提で生活しています。そもそもそこで大きくずれているのです。
「死にたい」という発信を家族が拒絶するのは、その人が死んでしまう未来を拒絶しているのであって、死にたいほど辛い今の苦しみを否定しているわけではありません。
ケース④:うつ病そのものを否定されるとき
理由の一つは、家族側の無知です。うつ病や精神疾患、精神障害がどんな病気でどんな治療方法があって経過や予後がどうなるか、を知らないし、知ろうとしないのでしょう。
二つ目は過度の同一視が考えられます。うつ病本人と自分自身が別の人格を持つ人間だ、という認識が欠けています。
自分が大丈夫なら相手(うつ病になった家族)も大丈夫なはずだ、または自分のせいでうつ病になったのだ、という思い込みが強すぎて、受け入れることが出来ないのです。
三つめは軽視です。うつ病は甘えだ、とか、本当は病気なんかじゃないのに本人が思い込んでるだけだ、という見方から離れられないのでしょう。「うつは心の風邪」というフレーズを間違えて捉えていたりします。
こうした家族に理解してもらうには、第三者を間に入れましょう。
学校の先生、会社の上司、医師、カウンセラー、ソーシャルワーカー、身近でうつ病を経験した人など。
そのような第三者から、無理解を責めない話し方で伝えてもらうのも方法の一つです。
まとめ
うつ病本人とその家族の間には、どんなに頑張っても埋められない溝、超えられない壁があると思います。
それでも一緒に生活しているのですから、お互いの状態や考えが分からないままでは、生活が回らなくなります。
理解できない・されないのは、相手が悪いのではありません。
理解できるレベルに至るほどの情報がまだ足らないのではないでしょうか。
まずはうつ病の辛さを相手が分かるように、具体的な言い方で伝えてみることをお勧めします。
≪オンラインカウンセリング 惠然庵≫
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