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メンタルケアラーへ10のアドバイス

2023年11月29日

テーマ:ケアラー支援

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

メンタルケアラーへ10のアドバイス
ー 自分を労りながら家族をサポート ー

メンタルケアラーとは、精神疾患の家族を支えてケアする人のことです。
私もメンタルケアラーです。
ご主人や奥様、親御さん、お子さん、ごきょうだいなど、同居家族が精神疾患になったことで様々なストレスや不安、負荷で悩んでいる方はとても多いと思います。
今回は私自身の経験とカウンセラー・精神保健福祉士としての見解を踏まえて、「メンタルケアラーに身につけて欲しい10ヶ条」をお話したいと思います。

その1:体力

何はともあれ体力が必要です。
健康、と言ってしまうと、目指す地点が高くなりすぎてしまいます。勿論健康であればベストですが、大人ですから家族のことが無くても多少なりとも不調や不具合は抱えているものです。
体力は、一見メンタルと関係ないように見えます。
ですが「ちょっとくらい無理しても何とかなる」という、いざという時の裏付けになります。無理をしないことが一番ですが、保険の役目を果たしてくれます。
体力をつけるためには、生活リズムを守りましょう。眠れない家族に合わせて生活を変える必要はありません。

その2:相談相手

意外と難しいですが、一人または一か所は作っておきましょう。
専門家に相談出来るとメリットは大きいです。悩んでいる人の話を聞くのが仕事ですからどんな話も聞いてくれます。
併せて専門家ならではの情報や知恵、違う視点などももらえるでしょう。

専門家ではなくても、正直な気持ちを話せる相手がいる、というのはメリットが大きいです。
誰にも話さないで抱え込むことで、感情が膨らんで複雑化し、正体が分からなくなります。色んな色の絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたら何色を混ぜたか分からない色になってしまうように。
そして「私はいつでも一人で頑張っている」という思い込みにつながると、孤独感を強めてしまいます。

友人や知人に話しづらければSNSやブログなどで吐き出すのでも効果はあります。ページビューやインプレッションがつけば「読んでくれている人がいる」、つまり「知ってくれている人がいる」と分かって気持ちが楽になります。

その3:良質な睡眠

その1の「体力」にも繋がりますが、睡眠は本当に大事です。
睡眠は量と質の両方が必要です。どちらかと言うと質ですが。
質の良い睡眠を一定時間毎日確保できることで、体の疲労と損傷が回復されます。一緒に脳の疲労も回復します。しっかり休息をとることで自律神経のバランスが整い、頑張る時に頑張れる、休むときには休める体の下地が整います。

体調や季節によって増減しますが、1日6~7時間、出来れば入眠後の90分はしっかり爆睡しましょう。

<参考ページ>
プチ・スキルアップ講座『睡眠の質を高める』

その4:楽しめる趣味

若い時は趣味が色々あったのに、大人になるといつの間にかやらなくなっていませんか。
それは当然ですよね、仕事でも家庭でも年齢が上がれば責任も強くなり、付随してやらなければいけないこと、考えること、気を配らなければいけないことが増えるので、趣味のための時間は取れません。

ですが、辛い時ほど趣味を大事にしてください。
趣味に没頭している間は、不安や焦りなどネガティブ感情から解放されます。
思考を切り替えることが出来、「今」に集中してマインドフルになれます。
趣味は自分の「好きなこと」ですよね。好きなこととは自分らしさの結晶です。趣味を楽しむことは自分らしさを取り戻すことです。

まずは10年前好きだった音楽を聴いてみる、というのは如何でしょうか。

その5:他人に甘える力

メンタルケアラーに一番欠けているのはこれではないでしょうか。
はい、私もそうでした(笑)
うつ病が「甘えられない・頼れない結果なる病気」とすると、その家族も実は同じ特徴を持っていることが多いです。

「甘える」って、なんでしょう。
一般的には、力のない小さな子供が親や大人に世話をしてもらったりもたれかかったりするイメージですよね。子どもの専売特許のような。
だから「大人なんだから甘えちゃだめだ」と決めつけて、全部自分で背負おうとする。

ですが、大人の、特にメンタルケアラーの抱える責任や役割は、「大人だから」で抱え込めるほど小さくも軽くも少なくもありません。
「子どものように甘える」のではなく、今の状況を分析・整理して、自分のキャパシティを知り、出来ることと出来ないこと、やるべきことと他の人に頼むことを仕分けしてお願いする、と考えるのは、「甘え」というより「分業」ではないでしょうか。

その6:脱・完璧主義思考

完璧な姿を目指すために頑張ることはとても大事ですし素晴らしいです。人は目標や「目指す未来」があるからこそ頑張れるのですから、その目標が「完璧な状態」を指すだけのことです。
ですが、いつでもどこでも完璧で「なければならない」と考えてしまうと、完璧は途端に「害」になります。
完璧の邪魔をする自分のゆるさとか、甘えとか、疲れとか、人として持っていて当たり前な部分が全部「欠点」に見えてしまうのです。
欠点だと思うと、自分を労わることが出来ず、自分を大事に出来ません。完璧を目指すための材料にしかならなくなります。

完璧は目標どまり、日常にはしないことがポイントです。

その7:「なんとかなる」精神

義父の口癖が「ケセラセラ」です(笑) でも本当に、大事な心の持ち方だと思います。
私も昔は「なるようになる」「なんとかなる」と頭では思っていても、本音では「そんなわけあるか」と否定していました。なんとかなるように努力しなければ「なんとかなる」は実現しない、だから今は必死で頑張るしかないのだ、と。
結果として一人で抱え込んで変なタイミングで夫にブチ切れてケンカになって自己嫌悪して、という分かりやすい負のサイクルを作り出してました。

なんとかなる、は、もちろん寝て待っていても難しいかもしれません。
ですが、この記事を読んでくださっているということは、「なんとかなる」未来のための努力をしているからこそ、たどり着いてくださったのではないでしょうか。

「なんとかなる精神」とは、理想的な未来が空から降ってくるのを待つのではなく、今努力している自分を信じて、それを続けていくことです。

一人だけでは難しいです。人の気持ちはすぐグラつきます。グラついた時のために、誰かに甘えたり、相談したり、趣味を楽しんで自分を休ませたりしましょう。

その8:同じ悩みを持つ仲間

同じ悩みを持つ人同士だから分かる「あるある!」って、すごく勇気をもらえます。
「私だけじゃなかった!」と分かることで一気に心が軽くなります。
ケアラーの悩みに限らず、どんなことでもそうですよね。仕事の愚痴を同年代の同僚同士で共有するのも「あるある」が欲しいからではないでしょうか。

連帯感というか、孤独が減るというか、自分だけが悩むわけじゃない、他の人だって悩むような問題だったんだ、だから悩んでいてもおかしくないし、間違っていなかったんだ、と納得・腹落ちする感覚です。

それを感じられるだけで、とても大きな助けになるのです。

その9:一人になる時間と場所

親と一緒に住んでいた時は個室を持っていた人も、結婚するとそれが無くなることは多いと思います。自分よりも子供優先になったり、夫婦でいるのに個室を持つのも余所余所しいのでは……、と思ってしまったりします。

ですが、一人になれる時間と場所を持つことはメリットがたくさんあります。
まず、自分だけですからマイペースで過ごせます。他者のペースに合わせる必要はありません。
他者の存在はそれだけで刺激です。そちらに気を取られて内省出来ません。
自分一人きりになることでしかリラックス出来ない人には尚更必要です。
一人で過ごすことで自然と考え事をする時間を持てます。忙しい日常では得られなかった気づきがあるでしょう。

出来ればデジタル機器はオフにしておきたいですね。

その10:自分を守って労わるスキル

最後が一番大事で、①~⑨の総まとめと言ってもいいでしょう。
自分を守って労わるスキルとは、「セルフコンパッション」と言います。コンパッションとは慈悲です。日本人にはなじみ深い言葉ですよね。
仏様が民草を慈しむ心を、自分自身(セルフ)に向ける、ということです。

夜寝るとき、頭の中では
「今日はあれが出来なかった、明日こそやらなきゃ」
「今日は大丈夫だったけど、明日はどうだろう、だめかもしれない」
「もっとあれを増やさないといけない。そのためには私が我慢しなきゃ」
と考えるのと、
「今日はあれが出来た、頑張った、よくやった」
「今日は無事過ごせた、普段頑張っている成果だ、よかった」
「今はこの状態で充分だ。明日も今日と同じように、出来る範囲で頑張ろう」
と考えるのとで、どちらがストレスが少なく、生きる意欲がわいてくるでしょうか。

自分で自分の頭を「よしよし」と撫でてあげましょう。

【まとめ】

意外と自分自身に手をかける要素が多いことにお気づきでしょうか?

メンタルケアラーに必要なスキルとは、金儲けでも医療技術でも宗教家のような立派な教えでもありません。
自分が安定してこそ大事な誰かを支えることが出来るのです。

是非、心の片隅に覚えておいてください。


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この記事を書いたプロ

西岡惠美子

精神障害者とケアする人を支えるライフカウンセラー

西岡惠美子(惠然庵(けいぜんあん))

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担当西岡惠美子(にしおかえみこ)

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