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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

傍目八目とはよく言ったもの

2022年5月11日

テーマ:新橋事務所日記

コラムカテゴリ:ビジネス

【今日のポイント】

 連休明けの最初の投稿です。
今回は、脱サラ・起業を目指す父親が
息子のある行動によってその夢を一時保留にした
珍しいケースを紹介したいと思います。

【父親の起業相談】

 最初は、父親からの相談でした。
一部上場の企業に勤める50代半ばの会社員の方です。
役職定年を数年後に控え、早期退職して開業を目指したいという相談でした。

 いろいろと話を聞いていると、なぜその業種で?という点が曖昧で
突き詰めてみたところ、知り合いが何名か成功しているということが
最も大きな動機でした。

 ですが、
先達がその仕事を始めたのは、もう5年以上前のことで
その当時と環境が変わっていることにはあまり注意を払っていません。
計画自体は綿密で資金計画も予定通り2年で黒字化すれば、問題ない内容でした。

 さらに、
当然商売には競合がつきものですし、立地面にもやや不安要素がありました。
競合店との目立った差別化戦略もなく、ひたすらオーソドックスな計画でした。

 さらに気になるのは
その方は事務職で約30年、営業経験が皆無という点もありました。

 本人によれば、
接客には自信があったようですが、第三者が納得するような根拠とは言えません。

 最後には
「自分の事は自分が一番わかってます。」
「2年近く考えて考え抜いた計画です、自信があります。」
と、強気を崩しませんでした。

【突然の状況激変?】

 それが、その後別件で相談したいと連絡がありました。

「30になる息子が、脱サラして店を出すと言い出した、翻意させて欲しい」
というものでした。

 特に父親の起業熱に感染したのではなく、
かなり以前から密かに計画を練っていたようでした。

 全くの偶然のタイミングで、ほぼ同時期に「決意表明」したわけです。

 息子さんも、これまた偶然ですが、
業種は違いましたが物販・飲食系での出店を目指していました。

【他人には冷静な視点?】

 前回の自分の起業の相談時には、
私から自身の計画の疑問点や課題等を指摘され、
頑なに自説を曲げなかった父親でしたが、
息子さんの事業計画については、実に細々と疑問点や問題点を指摘したのです。

 最後は「人生の先輩である親の言うことを聞け!」
「サラリーマンしか知らないお前がそう簡単に上手くいくと思うな!」
といった、説得効果ゼロの抑え込みに奔ったそうです・・・

 話を聞きながら、
「その指摘は以前私が貴方の計画に対して言ったことと同じですね」
「仮に貴方が今の息子さんの立場だったら、サラリーマンしか経験していない、
それも事務職経験しかない父親からの言葉に素直に従うと思いますか?」

 この問いかけに対しては、さすがに反論はなく、しばし沈思黙考となりました。

【傍目八目は大切】

 自分の計画は万全、完璧と確信し、第三者の言葉を素直に受け入れない。
なのに第三者の計画については、実に俯瞰的な視点でアドバイスをするのです。

 まさに、傍目八目の好例です。

 結果としては、
あれだけ聞く耳を持たなかった父親は
改めて自分の計画を見直すこととなりました。

 逆に息子さんは
着々と準備を進め、間もなく念願の店を出すまでになったのです。

※実際、後日息子さんの事業計画を聞く機会がありましたが、
 父親のそれより数段上の完成度でした。

 父親としては、
自身の起業・独立といった計画を一時保留することになりましたが、
ある意味息子さんの計画があったことで拙速な退職や不安要素を抱えたまま
見切り発車での開業と言った暴走を防ぐことになったのです。

 今回は、偶然の成り行きで失敗を避けることが出来た訳ですが、
いくら自分自身では完璧、成功確率100%といった自信があったとしても
出来るだけ第三者の冷静な、客観的な視点での感想を聞くという姿勢を持つべきです。

 くれぐれも家族にまで内緒で事を進めるような真似だけは避けて下さい。

 

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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