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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

前のめりな起業にご注意 

2024年2月27日

テーマ:起業・独立

コラムカテゴリ:ビジネス

ニュー新橋ビル外観

【はじめに】

 前回のコラムでは起業・独立の際の
事前の備えや覚悟についてを紹介してきました。

 今回はいよいよ具体的な行動の際に直面する課題を
採り上げてみたいと思います。

 中でも「事務所・店舗探しの際の注意点」を
具体的な事例を交えて紹介していきます。

【イメージ先行でオフィスを決める】

 コロナ終息後、起業志望者、開業予備軍が復活し、
具体的な拠点探しが復活してきたようです。

 のど元過ぎればではありませんが、改めて自分の城を持つ、
この考えで都心のオフィスへの回帰も始まったようです。

 ここで要注意なことは「イメージ、ノリで決める」リスクです。
先ず場所については、「駅チカ」はある意味当然の要求でしょう。
分かりやすく、行きやすければそれだけで一つのメリットになり得ます。
 
 ですが、問題なのは「入りやすいかどうか」です。

 商店街の中の戸建ての事務所ならばわかりやすく、アクセスもいい。
堂々と看板を掲げて宣伝も自由に出来る。

 ですが特に士業での開業の場合、明らかに法律関連の事務所に
日中、人の目がある中でドアを開けるのはかなりの勇気が要ります。
よほど切羽詰まった状況でなければ、躊躇するのが普通なのです。

 却って雑居ビルの2階以上の方が人の目は避けられます、
ですが今度は路面店とは違い外から中を覗き見ることが出来ません。
ここでもドアを開ける、叩く勇気が問われるのです。

 喫茶店や物販の店舗とは大きく異なるのがこの点です。

 他にも少数でしたが
新規開業なので、オフィスも新規がいいという考えもありました。
全面的な否定はしませんが、それより優先すべきことがあるのでは?

 以下に実際のやり取りの中から抜粋します。

 「何故この場所での開業を決めたのでしょうか?」
 「この広さの物件であることに何か譲れない理由があるのですか?」

 私からすれば家賃相場がワンランク高いエリアになぜ?
 個人事業での開業で最初からこの広さは無用なのでは?

といった疑問から上記のような問いかけをしたところ、

 「何と言っても今話題のスポットに隣接してますから。」
 「とにかくこの場所で開業することが夢だったんです。」
 「ここなら友人に自慢出来ますし、信用度も高まるのでは?」

 あるいは
 「将来のスタッフ動員を見越してこの広さを確保したのです。」
 「将来の引っ越しが面倒なので」
 「応接セット、スタッフ用スペース3人分を確保したいので。」

 念のため書きますが、業務を始める以前の話です。
既に業務繁多で支障をきたしている事務所の話ではありません…

 確かに自分に目に見えるプレッシャーを与えることで
仕事へのモチベーションをアップさせることは否定しません。

 ですが自分の業務でターゲットとするユーザーの有無や
競合を考慮した市場性を吟味した結果ではないケースが多いのです。

 イメージ(よりも妄想)先行、ノリだけで決めるような
安易な問題ではありませんね。

【拙速な契約締結】 

 次に、お目当てのエリアで物件探しの際にやらかしがちな問題です。
 
 たまたまでしょうが、候補物件探しはネット検索で、
という方が私のところに来る相談者の特徴です。

 話を聞くに、ネット上の物件はそれなりに比較検討し、
最も自分の求める要件を満たしていると思われる物件と
そこを管理する仲介業者のみに連絡をして出向く。

 周囲の店舗やオフィスにはあまり関心を示さず、
最初から契約ありきでの来店で、その物件だけ内見し、
ネット上に記載された条件で契約成立、という流れのようです。

 個人として特に驚いたのは
「相見積もりをしない」「相見積もり自体を知らない」
といったケースがあったことでした。

 ウチにしか足を運んでいない、
 契約条件にも異議を唱えない
 加えてろくに契約書を読まないまま

 仲介業者側からすれば「超上得意なド素人様」でしょうね。

 せめて近隣の仲介業者2,3社には直接足を運んで
対面での相談は経験しておくべきでしょう。

 中には同じ物件で特典付きのキャンペーンを実施中
(多くは期間中の成約の場合初回家賃無料等)というケースもあります。

 自分では気付けなかった近隣の類似物件を紹介されたり、
予想以上にいい物件に出くわすことも少なくないのです。

 すでに何度も転居や移動を繰り返し経験しているならば
自分で探す術も体得しているでしょうが、人生初の起業、
それに伴う物件探しであるならば、専門家を頼ることは
結果的に良物件に出会える確率が高まりますし、
費用面でも相見積もりの結果想定以下に抑えることも
十分期待出来るのです。

【たら・ればは絶対に排除】

 繰り返しになりますが、
~いずれ人を雇って業務を拡大する(はず)
~この場所にふさわしい仕事を成し遂げる(から)
~このオフィスに似合う人物に(なりたい)

 こうなるだろう、こうなるはず、こうなりたい
いわゆる「たら・れば」の話は絶対に排除して下さい。

 次項の内容とも一部重なりますが、
上記のような案件は「成功してから考えればいいだけの話。」です。
自分が立てた事業計画ではじき出した家賃の上限までで
最適な物件を選択し、物件に求める条件に優先順位を決めておき
(家賃、広さ、アクセス、付帯設備等)譲れるのは何か、
これだけは絶対譲れない条件は何かを確立させてからの
物件探しを開始することを心がけて下さい。

 場合によっては自宅以上に長い時間を過ごすことになる仕事場です。
いきなり最初からベストを目指すのではなく、よりベターな物件を
間違えることなく選択することが結局は事業にも好影響を与えるのです。

【学ぶべきは失敗例から】

 事務所選びに限ったことではありませんが、
成功した結果だけを見て自分も成功すると考えるのは厳禁です。

 結果に至るまでのプロセスとそのプロセスを選択した理由は何か?
世間に数多出ている成功本ですが、この点を詳細に説明、解説している本は
残念ながら私は未だにお目にかかっていません。

 成功を真似ても同じ結果に辿りつくことはまずありません。
仮にそれなりの成功となっても想定通りの成果ではないはずです。

 学ぶべきは失敗事例から見出す。
失敗には不変の理由がありますが、成功にはないのです。

 これまた残念ながら自分の失敗事例を詳細に解説した本にも
私は未だに巡り合えていません。

 負け方を知っておけば、それを真似さえしなければ
同じ失敗や敗北はしません。

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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