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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

18才からは新成人ということ

2022年5月19日

テーマ:最近の話題から

コラムカテゴリ:法律関連


【今日のポイント】

 前回のコラムでは、
突然息子から起業志望を告げられて自身の起業計画を一時保留とした父親の話を紹介しました。

 今回も親子に関する話題を採り上げています。

 新たに成人扱いとなる18才の子供のいる家族の話です。 

【新成人で出来る事】

 先日とあるセミナーで知り合った50代会社員の方から相談を受けました。

「実は来年高校を卒業する末っ子が大学進学でひとり暮らしを始めるのですが、いろいろな記事やニュースを見ると勝手に携帯を契約したり、クレジットカード迄作れるとありましたが、他にどんな点に注意すればいいでしょうか?」というものでした。

 既に別のコラムでも紹介していますが、新成人は次のような契約が自身の判断だけで可能になりました。

・賃貸物件の賃貸契約を結ぶことが出来る。
・ローンを組んでの決済も可能になる。
・クレジットカードの作成(契約)も自分の責任で契約が可能になる。

 同居の場合でも気になるところですが、親元を離れてひとり暮らしとなればその心配は更に倍増するのは親の立場からすれば、仕方ないことです。

 とはいえ、このケースのような18才の大学生や就職したての18才の新社会人に連帯保証人なしで賃貸契約を即締結するような家主や不動産業者は現実問題としてどれだけいるでしょう?

 10年以上前の話ですから今はどういう規定なのかは未確認ですが、入居時の審査条件が比較的緩和されていたUR賃貸の物件の契約の場合でも、先方の既定の基準を満たすだけの預貯金の証明を求められていました。要は通帳の残高を確認して、初めて審査に入るという流れでした。

 同様に、ローンを組む場合も、クレジットカードを申し込んだ場合も、必ず事前審査があります。この場合も新成人単独での契約をすんなりパスするとは思えません。

 逆に言えば、「あなた一人のハンコでOK」という相手がいた場合が相当厄介なことになります。

【知らない方が悪い?】

 さて、前項で紹介した懸案事項に関してはほぼ親が関与することになるはずですから、親の了解のもとでの契約や、未然に防ぐことは比較的容易に出来ると思われます。

 中には高校生であっても「eスポーツ」や「YouTube」の強者で、大人顔負けの収入を得ているケースもある訳で、そのような場合は、契約は一般のケースよりは容易になるかもしれません。

 ~幸か不幸か、この方の子供はその手の才能には恵まれていないようでした…

 ですが、例えばビジネス絡みの勧誘については、要注意です。

 以前はシニア世代が定年後の仕事の選択肢の一つとして「起業・独立」がありましたが、ここにきて「定年前の起業・開業」にシフトが始まっています。

 このコラムでもシニア世代、又は早ければ30代からの起業や独立に関する話題を採り上げてきました。特にこの3年間のコロナ禍で、会社員としての将来に不安を感じ始めた中堅層が急増し、早期退職からの起業や、在職中の週末起業、会社公認の下の副業、または複業の促進などで、一流と言われてきた企業、一部上場企業と言えども定年退職の日まで安泰という神話(思い込み?)が揺らいでいるのが現状です。

 高校生の親の世代が、起業や独立を検討する中、10代20代の若年層にはネット上でのビジネスチャンス=起業機会がどんどん広まっています。

 先にも少し触れましたが、eスポーツやYouTube、インスタ等による「現代の一攫千金=ゴールドラッシュ」はもはや説明の必要は無いでしょう。

 「通勤電車に乗らなくていい」「煩わしい人間関係もパス出来る。」「全て実力の世界、年功序列も無縁な世界。」「究極のフレックス勤務。」など等、成功者が華やかであればあるほど、同世代の共感や憧憬は天井知らずです。

 ごく身近な同年代の若者が大成功を収めている。 
 自分とさして変わりのないような普通の若者に出来て、自分に出来ないはずは…?

 このような環境が拡がれば拡がるほど、
「君も10代でネットビジネスの成功者になれる!」などの謳い文句で新成人をターゲットにした悪徳商法も同時進行で増殖してきます。

 成功者の有料会員制のネット配信のセミナー、ネットビジネス初心者向けの講座開設、年会費や入会金を取っての研修参加、後援会への招待など等、あの手この手で甘いサクセスストーリーを語ってくるのです。

 先の相談者は
「こんな見え透いた内容で信じるほど子供は馬鹿じゃないでしょう。」
と反論してきました。

 ですが、親の世代である大人もほんの10年ほど前には「定年後は起業で悠々自適」「今からでも間に合うこの資格を取って独立開業!」等の書籍を買い求め、有料会員になって配信映像によるセミナー受講に大金をつぎ込んできたのです。

 このようなビジネスの勧誘以外にも、新成人に向けての勧誘は少なくありません。

 いったん話は変わりますが、私が大学に入学した際には、どこで調べたのか、4月早々から新入生から始める英会話24回コース、健康管理に○○スイミングスクール、今なら新入生特典が!等のDMが毎週のように届き、その後は通学路や正門前あたりにこの手の販売員?が待ち構えているようなこともありました。

 幸い高校から寮生活で東京に慣れ親しんでいた私は受け流しや無視は抵抗なく実行出来たので難を逃れましたが、やはり初めての東京暮らしと言った地方出身者はほぼ相手のペースに巻き込まれ、延々と加入を受け続けることになり、根負けして購入、契約を結ぶことになっていました。


 遥か昔の話ですが、この手の商売は今もしっかり生き残っているようです。


 ざっと調べてみたところでも、語学研修のセミナー勧誘やスポーツジムの会員募集、健康維持の名目での各種サプリの定期購入の勧誘などがネットでの検索で出てきました。
 
 契約後に思っていた内容と違った、やはり高額な会費が重荷になってきた等の理由で解約を申し入れれば、高額の違約金や解約手数料といった名目で、さらに出費を強いられることになり、身動きが取れなくなる。

 それでも、建前上は「成人である本人の判断による契約」であるのです。

 本当に、本人が慎重に吟味して、検討を重ねた結果として契約するのであれば問題はありません、全て大人の自己責任として、結果に責任を持てばいいだけの話です。

 ですが、言われるがまま、甘い言葉に流されて、又は大学の先輩の勧めで、などといった根拠で即断してしまうのは大いに問題ありです。



 冒頭で採り上げた相談者である父親に強く指摘したのは、この点についての注意喚起でした。

 この方の子供は初めて一人暮らしをする訳ですから、周りに相談相手もまだいない環境です。

 どうしても単独の判断で即断即決を起こしがちですし、仮に相談相手となるような同級生や先輩(社会人であれば同期入社や職場の先輩)がいたとしても、最悪な場合、この親し気な同級生や、やさしい先輩がこの手の勧誘を行う側と結託しているというケースもあるのです。数少ない相談相手がこれでは防ぎようもありません。

 いい年をした大の大人ですら、このような悪徳商法の餌食になる中、右も左もわからない新成人に「見極められない貴方が悪い。」で済まされるでしょうか?

【法教育は誰が行う?】

 従来の20才で成人扱いという取り扱いでは、仮に高校卒業後に就職した方は「2年間の社会人経験」を経ての「成人」となります。2年という期間が適当とはいませんが、人付き合いや社会的な慣習、気配りや注意力は先輩社員や上司、あるいは取引先の担当者からそれなりに鍛えられるでしょう。 いわば「成人までの準備期間」が設けられているわけです。

 大学に進学した場合、成人に達している3,4年生(一般的な事例として)が存在しています。ゼミやサークルに参加すれば、生きた見本がより身近に存在することになります。(すべてが頼りがいのある先輩ではないでしょうが)

 さらに大半の学生はアルバイトを始めています。ここでも社会の一端に参加し、厳しい現実や楽しい現実に触れる機会が与えられています。

 新成人にはこのような「試用期間」が設けられていません。
高校でも法教育が必要と言われていますが、現状ではまだまだ未整備な状況です。

 となれば、法教育の担い手は「家庭であり、親が担う。」のが現状では最適な選択と言えるでしょう。

 同居している社会人の兄弟や、祖父母がその担い手となることも可能ですが、いかんせん少子化、祖父母とは別居が大半といったケースの方が多いのが現状です。

 「もう立派な成人なのだから、自分で解決しなさい!」
と、突き放せる親はどのくらいいるでしょうか?

 現実は「成人とはいえまだ子供、親が代わりに支払います。」
となるのは見えてます。

 新成人が引き起こしたトラブルは、結局は親である自分たちに降りかかります。

 相談者の場合は、来春の卒業ということでしたから、まだ1年近い時間があります。

 夢を抱いて親元から巣立つ子供の将来を想うのであれば、この猶予期間に親子で向き合って新成人の権利と義務、そして責任というものについて十分レクチャーすることが最優先の親の役割ということで相談を終えました。

 さて、18才の子供がいるあなたは、いつから始めますか?

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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