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馬場孝夫

企業で「技術」と「経営」の融合を進める専門家

馬場孝夫(ばんばたかお) / 技術経営コンサルタント

ティーベイション株式会社

コラム

2012年版ものづくり白書を読んで

2012年7月5日

テーマ:経営戦略

コラムカテゴリ:ビジネス

経産省から毎年出ている「ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告書」(通称 ものづくり白書)は、我が国の製造業の全体像をとらえるうえで非常に役に立つ報告書ですので、毎年目を通しています。

2012年度版は、6月5日に公表されていますが、やっと忙しさもひと段落したので、一気に読んでみました。

今年は、なかなか、読み応えのある内容ではないかと思います。

内容は、
第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第2部 平成23年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策
の2部構成ですが、第1部が断然面白い。

第一部の中でも、「第2章 わが国ものづくり産業が直面する課題と展望」 で記されている、現在の製造業におけるビジネスモデルの変化の章は、非常に興味深いものでした。

つまり、製造業の製品や生産のアーキテクチャとして、各部分を微妙に調整しながら作り上げていく「摺合せ型」と、各部分が独立しておりそれらを組み合わせて製品をつくる「モジュール型」に分ける分類方法がありまが、日本はこれまで「摺合せ型」に強く、自動車等のこのアーキテクチャ製品に世界的な強みを持ってきた。しかし、技術が進歩し、デジタル化、ソフト化が進み、これまで「摺合せ型」であった製品が、どんどん「モジュール型」になってきて、日本の優位性がどんどん失われてきた、との分析です。

昨今のエレクトロニクスメーカ不振の元凶である、液晶テレビは言うに及ばす、自動車までも、ドイツフォルクスワーゲンが、モジュールアーキテクチャを採用しつつあり、世界の製造業における環境は激変しているようです。

このような認識のもと、では日本の製造業はどこに向かうのか、ということですが、その方向として示されているのは、高度な先端技術・製品の研究開発拠点や試作拠点とのこと。たぶん、この方向は間違っていないでしょう。しかし、それにしても、そうなっても、製造業海外移転に伴う雇用減少を補てんできるのか。その点は少々疑問だと思います。

年に1度のものつくり白書。今年度版はなかなかの力作だと思います。

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