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馬場孝夫

企業で「技術」と「経営」の融合を進める専門家

馬場孝夫(ばんばたかお) / 技術経営コンサルタント

ティーベイション株式会社

コラム

温故知新

2021年6月25日 公開 / 2021年6月27日更新

テーマ:経営戦略

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 経営戦略

今年の大河ドラマ「青天を衝け」を毎回楽しみにして観ています。このドラマの主人公は、渋沢栄一という、幕末から明治、大正、昭和にかけて生きた実業家ですが、この人の考え方をもっと知りたいと思い、渋沢栄一の著作「論語と算盤」を読んでみました。

渋沢栄一著「論語と算盤」


この本に貫かれている思想は、題名にあるとおり、「論語」の精神です。これは中国の春秋時代の思想家である孔子の教えをまとめたもので、儒教の根本となる書物であり、教えです。その主たる思想は、「仁」「義」「礼」「智」「信」という徳性を重んじることにあるようです。
「仁」とは、人を思いやる事。 「義」とは利欲にとらわれず、すべきことをすること。「礼」とは、人との上下関係で守るべきこと、「智」とは知識ですね、そして「信」とは、約束を守る事、誠実であること、と説いています。

 渋沢栄一は、江戸時代に生まれ、百姓、武士を経て、明治になり、官僚、実業家として生きました。彼によると、論語に代表される儒教教育は、江戸時代には士分に施されたのみで、百姓、町人(商工業者)には、このような教育がなされなかったとのことで、それが明治時代になっても、実業家には儒教精神が根づかないことの原因と論じています。

 明治維新後の、急速な西洋文化の輸入により、金融、製造業をはじめとする商工業が起こり、それを担う実業家は、日本の中枢で培われきた儒教文化になじまず、極端な言い方をすると、利益を得ることこそがその使命であり、拝金主義もまた認められるという、考え方に陥りがちでした。
 
 渋沢栄一は、これに異を唱え、商工業者は、単に利益を追求すればよいのではなく、その実業の運営を道徳に基づいておこない、その結果が世の為人のための役に立つものでなければならないと説きます。すなわち、実業家は、算盤だけではなく、論語の精神をもってその会社経営にあたるべきと考えるわけです。

 この考え方、昨今、会社経営で盛んに言われている「コーポレート・ガバナンス経営」に通じるものではありませんか。もちろん、儒教的思想全てが、現代にマッチしているとは思いませんが、すくなくとも、会社は、社会の為、倫理観をもって経営にあたる、という思想は、現代に通じるものがあります。

 当時の日本の大企業が、自己利益追求型のみで成長してきたのに対して、このような実業家が、日本の多くの企業のルーツになったことに、日本的経営スタイルの一端をみたような気がします。

 歴史を振り返ってみると、現在に通じる発見があるのが、面白いところです。

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