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コラム
本の出版を記念して~僕が建築を志したワケ その3~
2018年6月4日 公開 / 2021年1月4日更新
子どもの頃に出会った、
ひたむきに生きる大人たち
仕事でたくさんの人に出会うと、思わぬ質問を受けることがあります。
先日は「一番好きな映画はなんですか?」と突然尋ねられて、答えるのに難儀しました。
若い頃から映画はいろいろ観てきましたが、一番を選ぶのはなかなか大変です。
そんななか、時々受けるのが「影響を受けた人は?」という質問です。
これまた一言で答えるのは簡単ではありませんが、人生を振り返って思い付くのは子どもの頃に出会っ
た「新聞販売店のおっちゃん」や「露天商の親方」です。
建築にかかわる仕事をしているのだから、安藤忠雄先生やル・コルビュジエと答えたいところでしたが、実際には残念ながら地元のおっちゃんたちでした。
私が新聞販売店のおっちゃんにお世話になったのは中学2年、新聞配達のアルバイトを始めたときでした。
ある日、サッカー部の先輩に呼び出され「俺の後釡をやってくれ」と頼まれたのです。
「なぜ、ぼくなんですか?」と聞くと、「おまえ、朝練に遅刻しないから」と実にシンプルな答えが返ってきました。
そんな感じで始まったアルバイトでしたが、お金にも増して得るものがたくさんありました。
その一つは「生活をかけて働く人の真剣さ」を間近で見られたことです。
アルバイト先では地元紙である山陽新聞のほかにスポーツ新聞など4紙と牛乳の配達も請け負っていたので、合計すると1000件以上の顧客を抱えていたはずです。
私は自分の受け持ちである100軒程度をどうにか覚えるのに必死でしたが、店を経営するおっちゃんは常にすべての配達先を記憶していました。
今ならパソコンやスマホで簡単に管理できるでしょうが、当時、そんなものはありません。
~~つづく~~
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