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33.マスコミには、抽象的な論説よりも、具体的な実践論が望まれる

2023年5月1日 公開 / 2023年5月4日更新

テーマ:コーポレートガバナンス改革

コラムカテゴリ:法律関連

33.マスコミには、抽象的な論説よりも、具体的な実践論が望まれる

1.ある日の新聞に書かれた社説
 2023年4月30日付日本経済新聞の社説は「トヨタでOEMが盲点に 不正認証車9割、ダイハツ生産 東南ア戦略に影響 監視体制を強化」との題名の下、トヨタ系のメーカーに対して厳しい批判の論説が書かれているが、連年続く上場会社の品質データねつ造事件の系譜が断たれるような、実践的方法論は書かれていない。

2.追究すべきこと
 マスコミが追究すべきことは、次のごとし
①経営に対する「監視・監督」のために選任されたはずの社外取締役は、何をしていたのか?
②現場に足を運んだことはあるのか?
③自らが、または、外部の専門家に委託して、検査部門がどのような仕事をしているのかを調べたことが、一度でもあるのか?
④調べた結果、社外取締役は、会社にどのような報告をしたのか?
⑤報告書は残しているのか?
⑥経営陣も、その報告書を読んだことが一度でもあるのか?
⑦他社のデータねつ造に関する調査報告書を事前に読んだことはあるのか?
⑧その結果を踏まえて、自社の危機管理システムの中に、何をどのような形で採用したのか?

3.社外取締役も、積極的に働くべし
①社外取締役は、自社の犯した品質ねつ造事件を“我関せず焉(えん)”としているのではないのか?
②社外取締役は、自社の危機管理システムの大綱の中で、データねつ造に備えた規定を、どのようなものにしているのか、調べ直してみたか?
③ 社外取締役は、取締役会で知恵も知見も活かせない中、ただ眠気に堪えて無言の行を続けることだけを、社外取締役の仕事と思っているのではないのか?
➃社外取締役は、自社がTOBのターゲットになったとき、特別委員会の委員になるほどの人材であるはずだ。
製造業の社外取締役は、過去のデータねつ造事件を起こした他社に請うて、それら事件・事故の原因などの調査をさせてもらう必要があるのではないか?今からでも。
⑤ 社外取締役の報酬は、それらをすることに対する報酬である。
なにもしないことの報酬ではない。
これらを肝に銘じるべきではないのか?

 なお、社外取締役は業務執行をしないものと決めつけることはよくない。
社外取締役が上記のような調査をすることが業務の執行になるとしても、会社法348条の2により、社外取締役が、経営陣の怠慢を調査することになる上記のような仕事をすることは、社外取締役が同意する限り、取締役会の決議で可能なのである。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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