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20 機関設計の違いを明確にした文章であってほしいもの

2023年4月17日 公開 / 2023年5月14日更新

テーマ:コーポレートガバナンス改革

コラムカテゴリ:法律関連

20 機関設計の違いを明確にした文章であってほしいもの


(1) 某上場会社のコーポレートガバナンス体制の内容
東証プライム市場に上場している某社は、機関設計を監査役会設置会社とした会社であるが、「コーポレートガバナンス体制」として、冒頭に次の一文を書いている。

 すなわち、「当社は、取締役会から独立した監査役会による監査機能を確保しつつ、それに加え、業務執行を行う社内取締役(執行役員を兼務しています。)相互の監督・牽制はもちろん、取締役会を業務執行も担う社内取締役と監督機能に特化した役割を果たす社外取締役とからなる構成とし、取締役会での実効的な監督体制を確保することにより、業務執行の適法性、妥当性・効率性を実現することが当社の機関設計として適切であると考えています。このような考え方の下、当社は会社法が定める監査役会設置会社としています。」と書かれた部分である。

(2)この文章で問題にしたいことあり
問題の第1は、前記コーポレートガバナンス体制に関する一文に、監査役会に「業務の妥当性・効率性についての監査権限」があるかのような記載があるが、指名委員会等設置会社における監査委員会と違って、監査役や監査役会には妥当性監査権限はないはず。その点、誤解を招かない文章に直すべきではないか?
 なお、同社が監査役会監査の利点を強調したいのなら、監査役の独任制を取り上げるべきと思うが、独任制が活かされた例はほとんどないようなので、それを書いても訴求力は無いであろうが・・・

問題の第2は、「監督機能に特化した役割を果たす社外取締役」という言い回しについてだ。
 監査役会設置会社の取締役には監査権限はない(監査権限を持つのは、監査役会と監査役)ので、監督機能という用語の意味(監査はしないが監督はする実体)が分かりがたい。
 また、社外取締役の権限や職能は、業務執行権がないだけで、知謀あり余るほどの知見を生かして会社の業務全般によき助言をする職責はあるはず。であるから、監督機能に特化した「特化」の意味も分かりがたい。

問題の第3は、「社内取締役(執行役員を兼務しています。)」の言い回しだ。
会社法には「執行役員」という制度はない。
また、「執行役員」という言葉すらない。
この言葉の概要については、次のコラム21 で詳述するが、法令用語でない言葉を法令用語と誤解されるような書き方はすべきではないと思う。しかし、CGコードにも「いわゆる執行役員」という言葉が見られるので、そう強くは言えないが。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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