M&A 1 M&Aの巧拙は企業の成長力に差を付ける
13.創薬事業と死の谷問題とコーポレートガバナンス改革
(1)再生医療や創薬事業問題
2023年4月2日付け読売新聞の「地球を読む」によれば、2012年にノーベル医学・生理学賞を受章された山中伸弥京大iPS細胞研究所教授は、
① ヒトiPS細胞は、日本で開発した技術であるが、
② 今では、その研究開発の場が海外に移り、アメリカのボストンなど複数の地域に、日本全体を上回る研究開発力が蓄積されている。
③ これから始まる医学応用(再生医療や創薬など)には、必要な資金が桁違いに増え、また、膨大な時間を要する「死の谷」問題が横たわっている。
と語られている。
(2)「死の谷」問題
「死の谷」問題とは、研究開発の第一ステージは難なく乗り越えても、事業化する場合は巨額な資金・時間・人材を必要とするところから、その資金等を調達できないときは事業化ができない問題をいう。
たしかに、上場会社の資金力、人材力という点では、日本はアメリカの後塵を拝していることに間違いはあるまい。
要は、日本の上場会社は、巨額な資金を使わねばできない事業化資金が必ずしも十分あるとは言えないのである。
そういう意味でいうと、日本の上場会社は、不特定多数の出資者から資金を集めうる株式会社制度を、つまりは資本主義を、上手には使えていないようである。
(3)モデルナの例
モデルナは、メッセンジャーRNA(mRNA)のみに基づく創薬、医薬品開発、ワクチン製造に特化した会社であり、日本では、ファイザーとともに、コロナウイルスに効くワクチンを製造しているアメリカのバイオテクノロジー企業として有名であるが、創業は2010年であり、米国ナスダックに上場したのが2018年12月であるので、現時点では、創業して13年しか経っていない若い企業である。
そのモデルナは、創業以来32億ドルのエクイティ・ファイナンス(新株発行による資金調達)をし、営業損失を出し続けながら、2023年4月3日現在、同社の株式の時価総額は615億ドルになっているという。
そのような会社の株式が高騰したのは、ひとたび製薬に成功すると、それを世界中の国々で販売でき、株主に大きな富をもたらしてくれるからである。
(4) コーポレートガバナンス改革を進める必要性
日本でも、やがては、上場会社がコーポレートガバナンス改革を仕上げた後になると、資金や人材を集めることができるのではないか、と期待する。
何故か?
それは、後日、詳述する予定である。