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業務委託契約書における注意点

菊池捷男

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テーマ:企業法務の勘所

業務委託契約書における注意点

契約書作成の勘所は“見える化”であるので、
1.題名を“見える化”すること
⑴ 題名と内容が一致している契約書の例
○建築業者との「建物建築請負契約書」
○宅建業者との「不動産売買媒介委託契約書」

⑵ 一致していないもの
×コンサル会社との「業務委託契約書」 → 内容が見えない。
×コンサル会社との「M&Aに関する業務委託契約書 → 同じく見えない。
次の契約書は、題名と内容が一致している。
○コンサル会社(税理士法人系)との「M&Aに伴う税務アドバイザリー契約書」
○コンサル会社との間の「M&Aの対象企業の紹介に関する業務委託契約書」
○コンサル会社との間の「継続的な○○事務の処理を目的とする業務委託契約書」

2.目的条項
目的条項は、契約内容の解釈につき争いが生じたときの、解釈の指標になるので重要
例・コンサル会社との間の「M&Aの対象企業の紹介に関する業務委託契約書」の場合は、
「第1条本契約の目的は、受託者がM&Aの対象になる企業を探索し、委託者に紹介し、委託者とM&Aの対象になる企業との間にM&Aを成立させる(マッチング)こととする。」
と書くと分かりやすくなる。

3.業務の内容を定めた条項
これは契約の目的を達成する具体的な方法を書く条項である。
例・コンサル会社との間の「継続的な○○事務の処理を目的とする業務委託契約書」の場合
①最低限の仕様書(業務の遂行の枠組みと業務遂行の順序を図表を用いて説明した書面)②スケジュール表、それに③対価(報酬)の計算の根拠を書いたものを契約書の別紙にすること。

4.対価を明確に書くこと
ア 継続した業務の遂行に価値がある場合は、月額報酬式が望ましい。
イ 目的の達成に価値がある場合は、目的の達成に対する報酬だけにするのが望ましい。

5.成果報酬の方がよい理由
 宅建業者が結ぶ不動産取引媒介委託契約書の場合はそうなっているが、それだけでなく、民間も自治体も、業務委託契約では成果報酬式の報酬が増えてきているからである。
すなわち、2023年2月26日 日本経済新聞 [有料会員限定]電子版の見出し「民間委託は成果報酬で「PFS」自治体100超が採用へ」との見出しの記事によれば、事業の成果に応じて報酬を支払う「成果連動型民間委託契約(PFS)」を導入する自治体が増えていることを報じているのである。
業務委託契約では、効率的な業務の遂行と経済的な対価が求められているので、それに応えるには、インセンティブ報酬的性格の強い成果報酬が望まれているのである。受託者が何をしているのかが見えないのに、報酬だけは毎月一定額を支払い続ける例が見られるが、そういう契約書は見直す必要があると思われる。

• なお、成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)とは、地方公共団体等が、民間・地方公共団体等が、民間事業者に委託等して実施させる事業のうち、その事業により解決を目指す行政課題に対応した成果指標が設定され、 ・地方公共団体等が当該行政課題の解決のためにその事業を民間事業者に委託等した際に支払う額等が、当該 成果指標の改善状況に連動するもの、とされている。

 最近、月額報酬を一定期間支払ながら、その間、何らの有益な便益(サービス)も、情報提供すらも、なかったという、業務委託契約等でトラブルが頻発している感がある。
そういうトラブルを経験した企業の多くは、報酬は高くともよい。しかし成果報酬以外は支払いたくないと願っている印象がある。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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