第1章の3 立法への働きかけ ― 新事業特例制度
第3章 契約書のチェック・作成
勘所の1 契約内容の“見える化”
(1)“見える化”代表格の建物建築請負契約の場合は、
①設計図や仕様書や施工図で、一定程度の建物の内容が“見える“
しかし、建築部材・設備の高度なものや特別仕様のものを約束したときは、その部分は“見えない”ので、別途“見える化”する必要がある。
②工程表で、建築工事の進行状況の「予定」は“見える”。
③見積書で、請負金額の内訳が“見える”
④品質保証書で、部材や備品の品質が保証されていることが“見える”
⑤建築業者は、建設業法3条で「建設業を営む許可」を得ていることから、契約を履行する技術的な能力が一応“見える”
⑥建築予定の建物について建築基準法6条の確認(建築確認)を得ている場合は、「建物の敷地、構造、建築設備などが法律や条例に適合していること」が“見える”
しかし、建物建築請負契約書であっても見えない部分はある。その一部については後述する。
(2)“見えない”契約書
業務委託契約書や非定型の請負契約書に多い。
そのような契約書は
わずか1~2行で書かれた「業務」はあるが、内容が「経営指導」であるとか「コンサルタント契約」と書いているだけでそれ以上の記載のない契約書というものがあり、このよな契約書は、内容が“見える”ものではない。
では、こういう内容の見えない契約書については、どういうふうに書くと“見える化”できるかというと、
①企画提案書を書いてもらう。
②事業体系のスキーム(枠組み)や事業スケジュール等を盛り込んだ「業務計画書」を書いてもらう。
③「業務仕様書」も書いてもらう。
④履行能力(レベル)を保障する条項と、契約履行途中で契約履行能力が低いことが判明したときの、注文者・委託者を救済条項も書いてもらう。
とよいであろう。
この程度のことも契約書に書けないような相手とは、契約はしないほうがよい。
内容の“見えない”契約書の場合は、委託者や注文者が期待する委託業務や請負の結果を、受託者や請負者が果たさなかったとき、それが契約違反だと主張することは極めて困難になるケースが多い。
委託者や注文者は、「そんな仕事を頼んだ覚えはない。」と言っても、受託者や請負者が「契約どおりのことをした。」と言いだした場合で裁判になったとき、委託者や注文者の言い分が認められる可能性は低い(証明するべき「委託業務」や「請負の対象」が特定できていないため)と言わざるを得ないのである。
要は、契約書の作成・チェックの勘所とは、自己の欲するところを、余すところなく、裁判官など第三者に“見える化”することである。