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第3章の勘所の2 法令用語を使うこと

2022年11月26日

テーマ:企業法務の勘所

コラムカテゴリ:法律関連

勘所の2 法令用語を使うこと
法令用語を使うことは、契約書のチェック・作成の第2の勘所である。

(1)例1 「建築確認」と「建築許可」と「建築の許可」の違い
建築請負契約で「建築確認」という言葉が使われる場合がある。
これは正しくは、建築基準法6条の「確認」のことであり、通常「建築確認」と言い慣わされているので、「建築確認」と書いても問題はない。
しかし、「建築確認」を「建築許可」と書くと間違いを犯す。
それは、都市計画法53条の「建築の許可」と混同してしまう恐れがあるからである。

実際にあった例だが、「建築確認」を「建築許可」と書き、都市計画法53条の「建築の許可」も「建築許可」と書いたため、わけのわからない文章になったものがあった。
やはり、法律文書は、法令用語を正しく使う必要があるのだ。

(2)例2 「事業譲渡」と「営業譲渡」と「営業権譲渡」の違い

「事業譲渡」という言葉は会社法にある法令用語(467条)だ。
また、「営業譲渡」という言葉は商法にある法令用語だ(16条)。
しかし、「営業権譲渡」という用語は、法令用語ではない。

法令用語は、定義が明確な上、手続要件も法律で明確にされている。
したがって、「事業譲渡」であっても「営業譲渡」であっても、定義の意味どおりに理解し、手続きを正しく踏んでおれば、効果は与えられる。

しかし、「営業権譲渡」という名で契約を結ぶと、何を譲渡したのかが一義的に明確とは言えないだけでなく、手続要件を定めているわけではないので、契約書に書いた言葉だけで、当事者が欲した効果が得られる保障はない。というより、紛争になると、その契約は無効とされると考えていたほうがよい。

(3)「借地権の譲渡」と「借地人の変更」の違い
「借地権の譲渡」は借地借家法上の法令用語である。
これは貸主の承諾があれば有効である。
貸主の承諾がない場合でも、「貸主の承諾に代わる裁判所の許可」制度によって、借地権の譲渡を受けることができる場合がある。

しかし、「借地人の変更」という法令用語はない。
であるから、この名称の契約を結んで、その後問題になった場合、それは「借地権の譲渡」の意味の契約だと強弁しても、では「借地権の譲渡」の要件である「貸主の承諾」を得たのか、と反問されると、それを得ていないときは、借地権の譲渡の効力は生じない。
「貸主の承諾に代わる裁判所の許可」による救済制度があることにも気がつかないであろう。

まとめ
以上の3例から言えることだが、
契約書には、必ず法令用語を書くべきである。
法令用語を書けば、その法令用語を定めた法律の条文には手続要件(ときには救済制度)が定められているので、手続を踏むことを知り、それを行う知恵が得られることになる。
法令用語を使わない契約書は、無効になるリスクが、極めて高い。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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