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第2章の3-2 “見える化”をしない会社を襲った、今そこにある危機

菊池捷男

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テーマ:企業法務の勘所

2.“見える化”をしない会社を襲った、今そこにある危機

 日野自動車の例

 2022年に日野は、エンジンの燃費に関するデータ改ざんなどの不正を働いていたことが発覚し、国内で車の販売ができなくなった企業だが、これに関する読売新聞2022年10月7日付けの記事には、次の言葉が書かれている。

 すなわち、「不正の舞台になったのは開発を担うパワートレーン実験部」、「実験部はブラックボックス化していた」、「プロジェクト全体を監理すべき開発責任者も、試験内容を把握しておらず、実験部に丸投げであった」の3か所である。

 この上に同じ紙面に書かれた弁護士の談話の中の、「一番の問題は〈排ガスや燃費の〉基準をクリアしているかを検査する部署と、その内容をチェックして国の認証取得に向けた作業を担う部署が同じという点だ。利益相反の作業を同じ部署が兼ねる会社が、ほかの製造業にあるだろうか。」という言葉である。

ここから分かることは、日野は、業務の一部(実験部の業務)がブラックボックス化していたのに、それを“見える化”しなかったことである、
その1点だけで、日野の経営陣は、リスク管理システムの整備義務を放棄していたと言えるであろう。
そのうえ、検査をする仕事と検査をチェックする利益相反的仕事を共に実験部にさせていたのであるから、弁解の余地もないであろう。

なお、日経新聞の報ずるところでは、日野はこの不正を理由にアメリカで損害賠償請求訴訟を起こされたが、親会社のトヨ自動車も共同被告とされたとのこと。
親会社も子会社の業務の“見える化”には責任を負う点では日本と同じなのである。

データ改ざんの系譜

 データの改ざんは、日野自動車だけではない。
 古くは三菱自動車が、その後日産自動車、SUBARU(スバル)、トヨタなどの自動車メーカーが、また、神戸製鋼所、三菱マテリアル、東レなどまでがしてきた系譜が見られる。
 それだけでなく、日野の後にも、2022年10月になってだが、スバルが、安価な、基準に外れた材料を選定したことで、大量のリコールをすることになった。加えて、同月、三菱電機が「品質不正197件に 役員10人を追加処分」という日経新聞10月20日付けの記事になった。

日本の製造業の未来のためにも

 産業競争力強化法第1条には「我が国経済を再興すべく、我が国の産業を中長期にわたる低迷の状態から脱却させ、持続的発展の軌道に乗せる」という言葉が書かれている。
 そのためにも、リスク管理システム(内部統制システム)整備は、喫緊の課題ではないかと思われる。

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