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第1章の6 本章のまとめ 

2022年10月27日

テーマ:企業法務の勘所

コラムカテゴリ:法律関連

 これまで当然に認められると思っていたであろう、通達価格による相続税対策スキーム(銀行融資 + 不動産購入 = 相続税がの0または減額になるスキーム )を否定した前述の最高裁判所令和4年4月19日判決を、相続人や不動産販売業者や購入資金を融資した銀行が、事前に予測することは可能だったか?

業者と銀行は、予測が可能であったと言うほかない。
それは、この相続税対策スキームを可能にする評価通達そのものに、例外規定を置いていること、すなわち、評価通達の6項で「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」との規定を置いていることで明らかであろう。

法律上、損害という結果の発生(本件では、より高額の相続税が発生すること)が予見可能であったのに予見しなかったという「予見義務違反」に加えて、結果(相続税額の追徴)の回避ができたのにそれをしなかったという「結果回避義務違反」の二つの義務違反があるときに、「過失」が成立する。
すなわち、「予見義務違反」+「結果回避義務違反」=「過失」になるのである。
そうなると、この件の不動産販売業者も銀行も、この件の相続人から過失責任が問われることになるリスクが発生したと言いうる。

これらの事実から、本章の1に書いた弁護士に対する法律相談で、弁護士から、
①質問の要旨を整理した上で、それに対する回答を出し、
②評価通達を含む、法令上の根拠を示し、
③判例や裁判例を引用し、
④必要に応じて文献や官公庁がつくったガイドラインなどの引用や紹介をしてくれる回答を、
事前にもらっておくことの必要性、重要性は分かるはず。

このような法律相談が早めにできることも、危機管理のために必要ではないだろうか。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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