コラム
第2章 パワハラ防止体制の構築
2022年11月17日 公開 / 2022年11月18日更新
2.パワハラ防止体制の構築
(1)改正法の概要
2022年4月1日、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行された。これによりパワハラ防止はすべての企業の義務になった。
それにより、企業は、
①パワハラ防止方針の明確化、
②相談体制の整備、
③パワハラに関する労使紛争を速やかに解決する体制
を整えることが必要になった。
これもリスク管理システム(いわゆる内部統制システム)の一つであることは言うまでもない。
(2) パワハラの害
日野が起こしたデータ改ざん事件についての、読売新聞記事の内容は前述したが、前述した内容以外にも、「調査委は・・・パワーハラストメントに関する指摘が多いという印象をもった」との記載がある。
その記事を執筆した記者は、不正行為の陰にパワハラありと言いたい気持ちがあったのではないかと推測する。
しもし、日野の内部でパワハラがあったとすれば、その原因として、日野の起こた不正事件に対する従業員の意識的、無意識的なサボタージュがあり、それに対する上司の苛立ちの声がありして、パワハラに発展したとしても不思議ではない。
そうなると、パワハラという表に現れた現象よりも、その原因の究明こそが重要になる。
(3)第三者委員会による原因調査が意外に効果的
これまで企業は、社内にパワハラが生ずると、ともすれば加害者への懲戒処分の可否の検討や被害者の落ち度捜しに注力するが、パワハラの原因捜しをすることは少ないように思う。
しかし、パワハラは表面に現れた病理現象であり、病巣はその下にあると考えると、経営陣も、違った視点に立ってパワハラを考えるようになるのではないか。
その場合のパワハラ調査には、顧問弁護士ではない弁護士を中心にした第三者委員会による調査が効果的だ。
第三者委員会の委員に人を得ることができれば、原因の究明、責任者の所在などの追求型の調査だけではなく、加害者のパワハラを起こすに至った心情の分析までし、調査報告書を読んだ加害者をして十分に納得・反省させ、企業も労務管理に隙間のあったことに気づき、以後パワハラが起こりにくくなるだけでなく、労使間の信頼感が醸成されるという事例さえあるのだ。
また、パワハラだと思われた事象が、会社業務のありかたに対する的を射た批判の言動である場合もあり、企業も、第三委員会の視点から教えられることも少なくはない。
外部の有識者(複数)によるパワハラ調査を、禍を転じて福となす絶好の機会だと考えるのも、いいのかもしれないと思う。
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