第2章の1-2 リスク管理は親会社の取締役にも責任及ぶ
(1)間違った説明
東京地方裁判所昭和49年12月6日判決は、宅建業者の従業員のした説明に関し、
「 およそ、不動産の売買・仲介・・・等を業とする会社の社員たるものは、不動産自体に関する知識のみならず、その取引に必要な民法、税法その他の法律上の知識・経験を有するものとして・・・取引をする一般私人もこれを信頼し、・・・取引に過誤のないことを期待するものであるから、・・・これら不動産業者の社員は・・・租税の賦課等につき格段の注意を払い、・・・もし・・・取引をなした相手方に不測の損害を被らしめたときには、・・・その賠償の責を負うものと解するを相当とする。」(なお、判決引用文の・・・部分は、語句の省略部分を意味する。以下も同様とする。)
と判示し、不動産会社の従業員が間違った税法の説明をした結果、顧客が不動産取引に応じ、その結果かかった予期せざる税金(この件では約5000万円)につき、雇用主である宅建業者にその賠償を命じた。
これなど企業法務に関わる者には他山の石とすべきであろう。
と同時に、この問題は、第2章で解説するリスク管理システム(いわゆる内部統制システム)の一つとして規則化して、従業員に厳守させるべきであろう。あるいは、従業員の服務規則の中に明記しておく必要があるだろう。