不動産 宅建業者の瑕疵担保責任
1.第三者のためにする売買契約が可能に
令和2年4月1日から施行された改正民法(債権法)は、第三者のためにする契約を可能にした。
すなわち、
民法第537条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
という規定を新設したからである。
2.第三者のためにする売買契約の特殊な効果
第三者のためにする契約が頻繁に用いられるのは、売買契約を結ぶときである。
この契約は、売主と買主との間に、不動産を、売主から転売先になる第三者に直接移転することを目的とする契約である。
すなわち、
売主(A) → 買主(B)を飛ばして、所有権は、転売先の第三者(C)へ移転する契約
したがって、通常の売買契約とは違って、買主に所有権を移すことはしない。所有権は売主から直接第三者に移転することになる。
その意味では、第三者のためにする売買契約は、実質的な媒介契約である。
また、この契約によってなされる所有権移転登記手続は、売主から直接第三者にするので、買主への移転登記をしないため、事実上の中間省略登記になる。
これが、第三者のためにする売買契約の特殊な効果である。
3.宅建業者が第三者のためにする売買契約を利用することでトラブル頻発
要は、媒介隠しを目的としたトラブルが頻発しているのである。
何のためか?
媒介報酬では妙味が少ないので、転売利益を得ようとするところから生ずるトラブルである。
このトラブルは、下記の判例や裁判例もあることから、宅建業者と取引をした人にとっては、媒介外しのための第三者のためにする売買契約と思われ、生じるのである。
(法律の規定と判例)
宅建業法46条1項は、宅建業者の媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによるとされ、その額は売買代金の3%+6万円が上限とされ、同条2項で宅建業者はそれを超えて報酬を受け取ってはならにと定められている。
この媒介報酬に関する規定は、一般国民を保護する趣旨も含んでいることから、判例(最高裁昭和45年2月26日判決)により強行規定とされ、所定最高額を超える契約部分は無効と解されている。
(高裁の判決例)
福岡高裁平成24年3月13日判決は、この最高裁判決を引用した上で、「宅建業者が,その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行うためには,当該売買契約についての宅建業者とその顧客との合意のみならず,媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり,これを具備しない場合には,宅建業者は,売買契約による取引ではなく,媒介契約による取引に止めるべき義務がある」と判示しているのである。
ことほど左様に、裁判所の見る宅建業者への視線は厳しいものがある。
これを知った人は、宅建業者に対し損害賠償請求をする、ということが増えたのである。
4.宅建業者がなすべきこと
宅建業者が第三者のためにする売買契約の買主になることは間違っている訳ではない。しかし、前記高裁判決の言うように、媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり,また、その理由を顧客に対し丁寧に説明する必要がある。そうすれば、トラブルは激減すると思う。