ロータリー23 多様性と学問(2) ――英国王の吃音を治した学問――
いつの時代でも、世(よ)潮(ちょう)は、激しく変化し、深化しています。経済面を見ても、滄(そう)海(かい)変じて桑(そう)田(でん)となるごとく、何もなかったところに新しい産業が常に生まれています。
アメリカに生まれたGAFAMという企業群は、誕生からはまだ時間が経ってはいないのに、その全てが、自社株の時価総額が1兆ドル超の巨大企業になっています。そうかと思えば、桑田変じて蒼海になるごとく、あの銀塩フイルムで世界一のシェアを誇っていたコダックは、目(もく)睫(しょう)の間に海の藻(も)屑(くず)になって地上から消えてしまいました。革命的イノベーションを起こし続ける企業と、それまでの実績に安住してイノベーションをやめた企業の違いなのかもしれません。*ですから、同じ職業奉仕という名であっても、その中味は、時代のニーズをとらえ、常に変化と深化をさせていく必要があるのです。
では、現在の職業奉仕は、どのような変化と深化が求められているかといえば、EGS投資とSDGs(持続可能な開発目標)という政策課題に応えるものであることが求められていると思います。
2008年のリーマンショック以来、世界は、大企業、とくに上場会社にコーポレートガバナンス改革を求め、これらの会社に政策課題を突きつけていますが、こと日本の上場会社に関していえば、その動きは鈍く、金融庁や東証が笛(ふえ)吹(ふ)けど踊(おど)らずの感がないではありません。
一例として、アメリカの上場会社はすべて機関設計を指名委員会等設置会社にしているのに、日本は、この制度を2002年に導入しながら2021年時点でわずか2%程度しか採用できていないのです。外国資本とくにアメリカの機関投資家を満足させるにはほど遠い状態であるようです。その結果が、コラム25に紹介しました①日本の過去30年間の業績が、欧米や中国に比べ、はなはだしく悪化してきている事実や②日本の労働生産性の著しい低さに現れているのかもしれません。
いずれにせよ、ロータリーのいう職業奉仕も、職業倫理の顕揚、公正なビジネスは当然のこととしたうえで、時代が求める政策課題に果敢に挑戦していくことが求められているように思えます。世潮は、常に、新しい価値の創造を求めているのです。