ロータリー9 ロータリーでは、心緒乱れる経験は貴重
Kites rise highest against the wind、 not with it.
( 凧(たこ)は風の力を借りたときではなく、風に立ち向かったときに、最も高く揚(あ)がる。)
この言葉は、ウインストン・チャーチル言葉です。凧はイギリスの国威を、風はナチスドイツを指した言葉です。この言葉は、1940年5月10日にウインスタン・チャーチルが英国の首相になった直後ころの言葉です。この時点で、イギリスの欧州派遣軍将兵約30万人は、フランスのダンケルクの海浜(かいひん)に孤立し、ドイツ空軍によって機銃掃射と空爆を受けながら、撤退に向けて待機中という状況でした。このとき、チャーチルの元に、イタリアのムッソリーニを介して、ナチスドイツのヒトラーから、和睦の提案がなされてき、イギリスの戦時内閣では、イギリスは戦うべきか、ヒトラーと取引すべきかについて議論になりました。その閣議で、チェンバレン前首相やハリー・ファックス外相は、ダンケルクに追い詰められた将兵30万人の命を救うため、チャーチルに、ここは一時膝(ひざ)を屈(くっ)しても、ナチスドイツとの戦いを避け、取引するよう進言します。そこで、チャーチルは、休憩時間を取り、その休憩時間を利用して、戦時内閣の閣僚(5名)以外の25名の閣僚全員を招集します。そして、彼らに向かって演説をぶったのです。
「私は、ヒトラーと取引をするべきかどうかを熟考(じゅっこう)してみた。ヒトラーと取引をすれば、ヒトラーはイギリスの艦隊を要求するだろう。海軍基地も要求するだろう。やがて、空軍もヒトラーのものになるだろう。そして、イギリスには、ヒトラーの傀儡(かいらい)政府ができるだろう(著者注:この直後、フランスはそうなった)。そうなれば、イギリスは、奴隷国家になるだろう。諸君は、私が、ヒトラーと交渉することや、ヒトラーに降伏することを、一瞬でも考えたとすると、この私をこの地位から引きずり降ろすことだろう。私は確信している。名誉と歴史のある私たちの国イギリスが途絶えるのは、私たちの最後の一人が、地に倒れ伏した後であることを。」
このウインストン・チャーチルの演説は、25名の閣僚から万雷(ばんらい)の拍手(はくしゅ)をもって、歓迎されます。
このことを知ったチェンバレンもハリ-・ファックスも、もうそれ以上はドイツと融和(ゆうわ)を図れとは言えず、ついに戦時内閣も、ドイツとの戦いを決意したのです。
映画「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」では、このあたりの様子、すなわちイギリスの運命を決めたこの場面が、最大の見せ場になっております。