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2020/12/26  職業奉仕に必要な視点「みんなのため」

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テーマ:菊池捷男のガバナー日記

2020/12/26  職業奉仕に必要な視点「みんなのため」

1.使命(ミッション)不在の時代から使命を必要とする時代に
21世紀に入って、というよりも、もっと現在に近い時点になって、職業の履践、というよりも、会社経営を行うことに、それまでの価値観を一変せしめる価値観の変化が生まれている感じがする。
それは何かというと、使命(ミッション)のなかった時代から、使命を必要とする時代への変化である。

2.バブル時代とバブル崩壊
私たち日本人には、株式と土地の高騰がいつまでも続くという錯覚に陥っていたバブル時代(1988年頃に始まり、日経平均株価が38,957円の史上最高値を記録した1989年12月29日をはさみ、1991年3月頃まで)と、バブル崩壊時代(1991年から1993年10月頃まで)を経験した。
バブル崩壊の結果は、1997年から1998年にかけ、北海道拓殖銀行(拓銀)、日本長期信用銀行(長銀)、日本債券信用銀行(日債銀)、山一證券、三洋証券など大手金融機関が倒産し、また、無数の住宅専門会社も倒産した。

3.粉飾決算が引き起こした金融危機 リーマンショック
その後も、21世紀に入って、アメリカでは、2001年12月にエンロンが400億ドルの債務を残して突如破産(この時点でアメリカ史上最大規模の破産)し、2002年7月にはワールドコム社が410億ドルもの債務を残し破産した。
これらはいずれも粉飾決算が原因であったことから、アメリカ議会では、急遽、2002年7月にサーベンス・オクスリー法(SOX法)を制定し、粉飾決算に対する罰則の強化を図った(我が国でも同時並行的に会計不祥事が続発し、2006年6月に日本版SOX法とも言われる金融商品取引法が成立した)ものの、2008年9月には、投資銀行のリーマン・ブラザーズが、粉飾決算をしていたことが発覚し、邦貨換算で64兆円にもなる債務を残して倒産した。
その直前のアメリカの株価指数であるNYダウ平均は1万1420ドルであったが、半年後の2009年3月には6626ドルになるという(この間53%もの下げ)暴落に見舞われたのである。
これが世に言うリーマンショックである。
リーマンショックは、当然、我が国にも、株価の暴落と金融不安からのドル安(円高)という影響を与え、輸出産業に大きなダメージを与え、長期にわたって深刻な景気後退を引き起こした。

4.ミッションなき経済行為
なお、リーマン・ブラザーズが破綻する原因となったのは、サブプライムローンを金融商品にしたことであった。すなわち、サブプライムローンとは、信用力の低い人や低所得者層に向けた、主に住宅を担保とする高金利融資のことであるが、この融資は、借りた当初の利息は安く、数年後からは金利が大幅に上がる仕組みのものであったので、サブプライムローンの融資を受けた人は、不動産価格が値上がりし続けない限り、そして値上がりした時点で売却しない限り、いずれ破綻は免れないという宿命を負わされたといってよい融資であったのだ。
リーマン・ブラザーズは、このサブプライムローン債権を含む金融商品・仕組み債を作り出し国民一般に販売していたのであり、わが国を襲ったバブ経済とその崩壊を知る者には、危険極まりない金融商品であったのだが・・・・・
これらの経済行為には、使命感というものは、全く感じられないものであった。

5 みんなのためになるかどうかが、新しい価値観になる
― コーポレートガバナンスの確立が求められる時代が到来―
リーマンショックは(それ以前のバブルもそうだが)、顧客を忘れたビジネスモデルは失敗するという哲理を教えてくれた。
すなわち、それまでのアメリカにおける会社経営は、自社株式の値上がりを主たる目的とした、短期主義・利益至上主義・効率主義・合理主義、使命感なし、という体質であったが、リーマンショック以後は、ステークホルダー(顧客その他の利害関係者)の利益にも配慮すべきと考える、ESG投資などの新しい価値観が生まれた。
それがコーポレートガバナンス改革である。
会社経営は、短期的視点で考えるのではなく、持続可能性を包摂した長いタームで見るべしという新しい哲学が生まれたのである。
そこには「みんなのためになるかどうか」というロータリーの四つのテストの四番目の価値観が、息吹いている、と私には感じられるのだ。
これからの会社経営には、その観点に立った、ミッションとビジョンが必要と思われる。

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