コラム
自社株買い1 利益還元行為ではなく、自傷行為ではないのか?
2020年3月27日 公開 / 2022年1月26日更新
1,自社株買いの効果は、一時的な株価の値上がり
ソフトバンクグループ(SBG)株は、2020年3月23日に同社が2兆円規模の自社株買いをすると発表したことで、その直後3日間、大きく値を上げた。
この株価の高騰は、SBGが自社株を買うことによって株価の値上がりが生ずると見越した、投資家の先買いによるものと思われる。
今後、SBGが2兆円も資金を投じて自社株買いを始めれば、必然的に株価は上がる。
2,自社株買いは、必然、資産の劣化を生む
会社が自社株買いをすると、自社株の価格は高騰するので、会社は実際の価格A円より高いA円+a円での買い物をすることになる。この実価を超えるa円が、自社株買いをした会社の含み損になるのは理の当然である。つまり、自社株買いは、資産の劣化を生むのである。
3,自社株買いの資金の作り方でも、資産の劣化を生む
SBGは、自社株買いの発表と同時に、購入資金の確保と負債圧縮のため、保有資産(他社の株式)を最大4兆5000億円売却すると発表した。今後、同社が一度に多量、他社の株式の売却を始めると、その株価は相当下落するものと思われる。その場合、売らなければB円の実価ある株式を、B円-b円で売ることになる。SBGは、自社株買いをすることによりa円の含み損を抱えた自社株を保有し、また、他社の株式を売ることでb円の損を被るのではないかと思われる。
4,自社株買いで得をする者は誰か?
自社株買いによって利益を受けるのは、実価A円+a円で株式を売った一部の株主だけである。他の株主は、会社の資産の劣化により損するだけで何らの利益も得られない。
真に、株主への利益の還元をしたいのなら、増配をするべきである、これだと株主は平等に利益を受けることができるからである。自社株買いは、株主の利益にはならないのである。
5,自社株買いは、法律で禁じられていたことを忘れてはならない。
自社株買いは、特定一部の株主の利益になったり、会社そのものが株価操縦をするなどの弊害が大きく、法律(旧商法)はそれを禁じていた時代のあったこと、その理論はいまだ有効であることを忘れてはならない。
6,自社株買いを、株主への利益還元というのはまやかし。本質は自傷行為
自社株買いを「利益還元」と書くマスコミの記事が散見されるが、これは正しくは、「一部の株主への利益還元になるが、他の株主へは不利益になる、会社自身の自傷行為」というべきであろう。
SBGの株価は、自社株買いを発表した後高騰したが、理論上は資産の劣化を起こしているので、自社株買いという祭りの後は、以前の値以下に下がるのではなかろうか。業績とは関係のない、一時的な需給による株価の変動は、長続きするとは思えないからである。
“歓宴尽きて哀情多し”にはならないことを祈る。
2022/1/26追補
今般「GAFA next stage 」スコット・ギャロウェイ著:(発売日:2021/12/03 出版社: 東洋経済新報社)に、次のような一文があるのを発見しました。
すばわち、
「この数年、自社株買いが話題になっている。これは株価を上昇させ、経営上層部に巨額のボーナスをもたらす。だが、ビジネスには何の足しにもならない。不景気になれば、経営陣は自社株買いをしたことを後悔するはずだ。経営陣は、自社株買いに使ったキャッシュを取り戻したいと思うだろうが、後の祭りだ。自社株買いは、短期の投資リターンを高めるために企業の将来を犠牲にする時限爆弾だ。」というものです。
私の意見と同じ意見があるようです。
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