金融機関に対する取引履歴の開示請求を認めた判例の全文
Q 私Aは、相続人の一人です。今般遺産分割の協議に入って、他の相続人Bから私の相続分をBに譲渡してくれないかと要求されました。それをすると、相続債務についての私の相続分も、Bに移転するので、私が相続債務を支払うことはないというのですが、本当ですか?
A いいえ。東京地方裁判所平成28年5月12日判決は、「自己の相続分の全部を譲渡した者は,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分を失うが,相続債権者との関係では,取引の安全にもかんがみ,譲渡人は少なくとも相続債務について併存的に債務引受をしているものと解すべきである。そして,併存的債務引受により,譲渡人・譲受人間で連帯債務関係が生じるものと解せられる(最判昭和41年12月20日第3小法廷判決参照。)。」と判示しているからです。
なお、最高裁平成13年7月10日判決によれば、「共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し,譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり,分割が実行されれば,その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。このように,相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は,持分割合の数値が異なるだけで,相続によって取得した地位と本質的に異なるものではない。」のですが、では、相続分を譲渡した相続人が、いったん相続した相続債務から解放されるかというと、これは別論になります。すなわち、正解は以上のとおりです。