使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
【相談事項】
①どのような行為がカスタマーハラスメントに該当するか。
②カスタマーハラスメントの防止等に関して,会社としてはどのような措置を講じる必要があるか。
【回答】
1 相談事項①について
●結論
どのような行為がカスタマーハラスメントに該当するかは,一概に答えることはできません。
●理由
カスタマーハラスメントという文言は,平成30年3月に行われた厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」において,顧客や取引先からの著しい迷惑行為の存在を社会に対して周知・啓発するために考えられた造語であり,法律用語ではありません。したがって,カスタマーハラスメントという文言には法律上の定義は存在しません。
現在のところ,カスタマーハラスメントに該当する行為かどうかを一律に判断することができる基準は存在しませんし,厚生労働省が当該判断基準を示す予定もありません(厚生労働省に確認済み。)。
これらの理由から,顧客の行為がカスタマーハラスメントに該当するかどうかは,個別に判断する必要があります。この判断に当たっては,顧客からの要求内容と顧客の要求態度が相当かどうかで判断することになると考えられます。すなわち,要求内容又は要求態度が社会通念に照らして著しく不相当な要求は,カスタマーハラスメントに該当する行為であると考えられます(「カスタマー・ハラスメントとしての悪質クレーム対策の実務」鶴巻暁著/日本弁護士連合会)。
2 ご相談事項②について
●結論
厚生労働省告示第5号によると,以下の措置を講じる必要があると考えられます。
⑴従業員からの相談に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備
⑵従業員への配慮のための取組
⑶カスタマーハラスメントの対応に関するマニュアルの作成や研修の実施等
●理由
これらの措置を講じず,カスタマーハラスメントを放置した場合,労働契約に基づく安全配慮義務違反として,従業員から損害賠償請求がなされるおそれがあるためです。
なお,上記措置の具体例としては,
a 貴社に生じやすいカスタマーハラスメントを類型化し,対応方針を策定する。
b カスタマーハラスメントに対する貴社の姿勢を明確にする。
c 顧客対応の注意点,商品・サービス知識向上を含めた従業員教育を実施する。
d マニュアルを整備して的確な対応ができるように準備する。
e 典型的なカスタマーハラスメント事案について業界団体で標準的な対応を決める。
f 担当者一人に任せるのではなく,二次対応・組織的対応を講じる。
g 弁護士・警察・行政機関等と相談・連携できる体制を構築する。
h 従業員の適切なケアのために相談窓口を設け,カウンセリング・配置転換等柔軟に対応する。
というものが考えられます。