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遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで③

菊池捷男

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3 謬説なくならず
(その1)
 遺言執行者を、遺言無効訴訟を起こした相続人の代理人だという日弁連・懲戒委員会18年議決

 日弁連・懲戒委員会は、平成18年1月10日、
ア 遺言者が、「相続させる」遺言によって相続人Cに遺産を与えた。
イ 乙弁護士は、その遺言書の遺言執行者になった。
ウ 乙弁護士は、相続人Dから遺産の調査を求められたが、それに応じなかった。
エ 相続人Dから、受遺相続人Cに対し、遺言無効確認訴訟を起こしたとき、乙弁護士は、相続人Cの代理人になった。

という事件で、次の論点をつくって、乙弁護士を懲戒処分にすべきであると議決し、日弁連はこの議決に従い、同日、乙弁護士を懲戒処分(戒告)にした。

18年議決がつくった論点
④ 遺言執行者である者が、相続人の一方の代理人になることは許されないということは、懲戒先例として確立している。
⑤ 遺言執行者は、相続人から委託された者であるので、相続人から遺産の調査を求められたら、遺産の調査をして相続人に報告する義務があるのに、乙弁護士はこれに違反した。

(その2)
 遺言執行者を、相続人廃除の対象になった相続人の代理人だという21年議決 

日弁連・懲戒委員会は、平成21年1月13日、
ア 遺言者は、相続人Eに相続分の指定をし、相続人Fの推定相続人の廃除をする遺言書を書いて亡くなった。
イ 相続人Gから受遺相続人Eに対する遺留分減殺請求訴訟が起こされ、丙弁護士は受遺相続人Eの代理人になった。
ウ その後、丙弁護士は、家庭裁判所から選任されて、相続人Fを相続人から廃除する遺言執行者になった。
という事件で、

丙弁護士が、イで受遺相続人の代理人になりウで遺言執行者になったことは、「遺言執行者の職務の中立、公正さを疑わしめ、遺言執行者たる弁護士に対する信頼、信用を害する虞を引き起こした」との理由で、丙弁護士を懲戒処分にすべしと議決した。そして、同日、日弁連は、丙弁護士を懲戒処分(戒告)にした。
 なお、ここで、21年議決がつくった論点は、次のものであった。

21年議決がつくった論点
⑥ 受遺相続人の代理人になった弁護士が、相続人の廃除をする遺言執行者になることは、職務の中立、公正さを疑わしめることになる。

 (その3と4)
なお、日弁連・懲戒委員会は、これら3議決のほかにも、平成20年4月14日と平成26年8月20日に、弁護士が遺言執行者と受遺相続人の代理人を兼任したという理由だけで懲戒(いずれも戒告)議決をしているが、解説は割愛する。

つまりは、日弁連懲戒委員会は、遺言執行者を相続人の代理人だという謬説を捨てることはしなかったのである。

では、日弁連懲戒委員会の謬説は、はたして法律論として成立する者かというと、法律論としては、なりたたないものである。
以下は、次号で・・・

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