コラム
出版契約は、請負契約か準委任契約か?
2018年10月4日
1 定義
請負契約とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(民法632条)契約です。
一方、準委任契約とは、「当事者の一方が法律行為でない事務の委託をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる(民法643条・656条)契約です。
2 その効果の違い
死亡は契約終了原因
請負契約は、注文者が亡くなっても終了することはなく、相続人が注文者の地位を引き継ぎますが、準委任契約の場合は、委託者が亡くなると契約は終了します。
3 出版契約はいずれか?
次のカギ括弧内の文は東京地方裁判所平成26年(ワ)第14355号平成27年7月15日民事第4部判決から引用したものですが、この判決は、出版契約の法的性格を準委任契約と判示しています。
すなわち、「原告は,平成9年2月24日,被告との間で,原告の著作に係る写真を被告に使用(出版)させることを委託し,これによって得た売上金を原告60%,被告40%の割合で分配する旨の写真著作権使用(出版)契約(以下「本件準委任契約」という。)を締結した。(当事者間に争いがない。)」という判示しているからです。
この事件は、既に撮影した写真を書籍にする契約に係る事件ですが、文章を書籍にする契約では、
①委託者が原稿を書き出版会社に送り、
②出版社でこれをゲラ刷りして委託者に送付し、
③委託者はここで原稿を再考して原稿を修正するなど手を加え(校正。この校正は、一回で済むことは少なく数回繰り返すのが通常と思われます。)、
④最終稿を完成させて出版社に書籍にしてもよいという指示を出して、
⑤出版社が書籍にするわけですから、
①から③までの過程で著作者が亡くなったときは、出版そのものができません(請負契約の場合は、注文者が亡くなっても、請負人は仕事の完成ができる。)ので、出版契約を請負契約と考えるのは無理があるように思います。
また、出版契約にあっては、出版物の内容には通常、委託者に著作権や著作者人格権が発生しますので、ここからも、出版契約を請負契約というのは難しいと思います。
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