押印のない花押だけの遺言は無効 → 契約書は署名だけで済まさないこと
Q
「包括遺贈」と「特定遺贈」という言葉がありますが、「相続させる」遺言の場合は、何というのですか? 「包括相続」や「特定相続」とはいわないのですか?
A
「遺贈」については、講学上の概念(用語)として、「包括遺贈」と「特定遺贈」があります。
民法964条が「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。・・・」と規定しているところから、命名されたものです。
ところで、民法の規定に書かれた、法令用語としての「遺贈」は、講学上の「遺贈」のほかに、相続人に対し「相続させる」と書いたものを含まれます。 昨日のコラムを参照してください。
これは、特別受益に関する民法903条が「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、・・・者があるときは、・・・」と規定していることから明らかです。
ところで、相続人が被相続人から、特定の財産を「相続させる」と書かれた遺言の法的性格は、最高裁判所第一小法廷平成3年4月19日判決により「遺産の分割の方法を定めた遺言」と解されていることは、昨日のコラムに書いたとおりです。
ですから、遺言書で、特定の相続人に、特定の財産を「相続させる」と書いた遺言は「遺産の分割の方法を定めた」遺言になります。
「特定相続」とはいいません。
何故、「相続分の指定」遺言を「包括相続」といわず、また、「遺産の分割の方法を定めた」遺言を「特定相続」と言わないかは、「相続」という言葉は、遺言書によらない「相続」つまり法定相続をいう言葉だからだと思われます。