景品表示法違反② 課徴金制度の導入と初適用事例
1 金庫株の意味
金庫株とは、会社が保有している自社株(treasury stock)のことです。株式の発行会社が取得した自社株を、自社の金庫に保管しておく(必要が生じたときに使う)イメージから「金庫株」と命名されたものです。
2 歴史(禁止 → 解禁 → 歓迎)
(1)禁止
かつて金庫株の保有は、原則として禁止されていました。
金庫株の保有を認めると、①会社財産がカラッポになってしまう。②経営陣が会社の資金を使って自己の地位を保全するために利用するおそれがある。③株価操作に利用されるなどの理由からです。
(2) 解禁
しかし、平成13年に日経ダウ平均株価が過去の最高値の1/4近くに下がったとき、政府・自民党が、株価対策(株価を上げるため)として、急遽、議員立法で、上場会社が自社株を購入(金庫株を保有)できるようにしました。
金庫株の保有を解禁したのです。
(3)歓迎
それだけでなく、上場会社に関していえば、金庫株、すなわち自社株買いは、歓迎されるものになっているのです。
株主に対する利益の還元方法の一つと考えられているのです。
その歓迎ぶりは、次の報道でも分かります。
すなわち、平成30年(2018年)8月31の日経新聞は、「自社株買い好感」との見出しの下で、F電機という上場会社が、自社株を購入することを発表した翌日に、前日比で16%の株価高騰が見られたと、報道しているのです。
3 利用方法
金庫株は、現在、次のように利用されています。
(1)ストック・オプション(stock option)用に持っておく
ストック・オプションとは、会社の役員や従業員等に与える自社株購入権のことです。
この場合の購入価格は、あらかじめ決められていますので、その価格が市場価格を超えたときに、会社から金庫株を買い、市場で売ると売却益が得られます。ここから、ストック・オプションは、インセンティブ報酬といわれます。
(2)株式交換、会社分割、合併などの企業再編のときの対価として、あらかじめ保有しておく
(3)従業員持株会への売却のため取っておく
などがあります。
(4)償却
上場会社が自社株を市場から買い入れ、償却をしますと、その分、自社株という財産はなくなりますが、一方で、それ以外の株主の議決権割合を増やすなどのプラスの効果もあり、株主には歓迎される資本政策になっているようです。