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危険負担の条文を、改正法では逆転させた

菊池捷男

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テーマ:債権法改正と契約実務

危険負担とは、契約の目的物が、不可抗力によって滅失したような場合、その損失は、当事者いずれが負担するか?という場合の負担のことをいいます。

設例を挙げます。
1 問題
 Aが、特定のメーカーの特定の車種を指定して自動車を一台を販売店B社に注文したとします。販売店B社は、これをメーカーに連絡・注文し、その車がメーカーから販売店Bに納入された後で、地震により自動車が破損したと仮定した場合、その危険は誰が負うのでしょうか?
 旧法の条文は、危険負担債権者主義を採用し、Aが危険を負担することになっていました。
 しかし、これでは、注文者Aには、まだ自動車が手に入ってもいないのに、その自動車はなくなり、売買代金の支払義務だけは残ることになり、Aのみならず、一般の人も納得しないでしょう。
そこで、判例は、この場合は、B社が危険を負担するという解釈をしたのです。
条文に反する解釈がなされていたのです。

2 改正法
改正法は、危険負担債権者主義を定めた旧民法534条及び535条を削除し、危険負担に関しては、次の条文に一本化しました。

参照条文
(目的物の滅失等についての危険の移転)
第567条 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
1 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。

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菊池捷男(弁護士)

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