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一 将の能にして・・・⑦大廈の材を、どこで見るか?

菊池捷男

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テーマ:歴史と偉人と言葉

5 組織のトップの心得

 組織のトップは、組織を、大廈の材の淵藪にすべし。
 いな、組織が大廈の材の淵藪になるような者になるべし。

ア 大廈の材を、どこで見るか?

 陳平は、前述のように、漢帝国が成立した後、丞相にまでなり、劉邦の皇后・呂后の一族である呂(りょ)雉(ち)が、劉家(漢)の主権を横奪したとき、これを粛正し、劉家の漢帝国四百年(前漢・後漢合わせて)の基礎を築くほどの業績を残しており、彼が大廈の材であることに異論を唱える人はいないと思われます。

 しかし、劉邦が陳平の才をそこまで認めていたかというと、そうではありません。

 はじめ劉邦は、陳平が、若い頃嫂と不倫をしたといううわさがあったことと、劉邦が陳平を雇い入れた後陳平は職務に関して賄賂をもらったことから、陳平を呼び出し、なじります。

 このとき、陳平は、劉邦に向かって、「私は無一文でここに来ましたので、身を飾るだけのお金もなく、そのため民から賄賂をもらいました。もし、あなたが私を道徳家として迎えられたのなら、私にはその資格はないので、ここを去らせていただきます。」と言うのです。

 この言葉を聞いた劉邦は、なるほどそうだった。わしは陳平を道徳家として雇うたのではない、ということに気がつき、陳平の過去を不問に付しました。

せっかくの大廈の材です。
“瑕瑾を咎めて、ゆめ、大事を忘るなかれ” です。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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