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ウインストン・チャーチルに学ぶ⑦ 棺を蓋いて事定まる

菊池捷男

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テーマ:歴史と偉人と言葉

棺(かん)を蓋(おお)いて事定まるという言葉は、人の評価は、その人の遺体を棺(ひつぎ)に納め、蓋(ふた)をした後でないと、定まらないという意味のことばです。

では、ウインストン・チャーチルについては、遺体を棺に納めた直後の、イギリスおよび国民の思いはどうであったのか?
それは、彼の葬式の日のことから理解できます。
彼が亡くなったのは、1965年1月24日、満90歳の時です。
第二次世界大戦が終わって20年後のことです。
葬儀は国葬でなされました。

民間人の国葬としては1898年のウイリアム・グラッドストーン以来のことですが、グラッドストーンの場合と違って、ウインストン・チャーチルの場合は、エリザベス(二世)女王とその夫(王配)であるエジンバラ公爵が参列しています。
女王が民間人の葬儀に参列したことは、イギリス史上初めてのことでした。
その英国女王は、チャーチルが埋葬された墓所に、手書きで書いたカードを添えた花を献じています。
カードには、「国民と英連邦の人々より。感謝に満ちた追憶を込めて。エリザベス」と書かれていました。
これらのことから、イギリスの王室が、ウインストン・チャーチルに対し、強い愛情と尊敬の念をもっていたことが分かります。

では、イギリスの一般国民の思いはどうであったのか?
ここに、ウインストン・チャーチルの葬列を見送っていたイギリス国民の様子として、元秘書であった人物が語った言葉があります。
かれは、古びた英国空軍の制服を着た元軍人が屋根の上から直立不動の姿勢でウインストン・チャーチルの葬列を見送っていたこと、また、一人の農夫が、牧草地に立って、頭を下げて祈りを捧げていたことを、目撃しています。
イギリスの元軍人も、イギリスの国民も、等しく、ウインストン・チャーチルには、強い哀惜の念をもっていたことが、よく分かります。

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