ポレートガバナンス・コード改革が動き始めた② 代表取締役の解職をクーデターというのは、昔の話
はじめ、ファンド乙が,資産内容のよい甲に対し公開買付(TOB)をかけた。
驚いた甲は乙に対し質問状を出し,その回答を得たが,それによると,乙は①日本において会社を経営したことはなく,現在その予定もないこと,②現在の甲を乙が自ら経営するつもりはないことが分かった。
そこで、甲は、乙の買収を「濫用的買収」であり法的に許されない買収だとして,防衛策として、新株予約権(この権利を行使すると株式が与えられるという権利のこと)を全株主に与えた。
その内容は,乙以外の株主はその権利を行使するとの株式が取得できるが、乙が新株予約家を行使しても甲の株式は与えず、その代わりに金銭を与えるというものであった。
かくて、乙は、東京地裁に対し、この防衛策は株主平等の原則に反し無効だとして、差止めを求める仮処分を申し立てた。
しかし、一審、二審、三審とも、甲を勝たした。要は、防衛策は認められたのである。
最高裁の決定要旨は、次のとおり
最高裁判所平成19年8月7日決定
1 乙の株主平等の原則に反するとの主張について
法は・・・株主平等の原則を定めている・・・株主平等の原則の趣旨は,新株予約権無償割当ての場合についても及ぶというべきである。・・本件新株予約権無償割当(により)・・・乙は,その持株比率が大幅に低下するという不利益を受けることとなる。(しかしながら,)特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の存立,発展が阻害されるおそれが生ずるなど,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には,その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても,・・・これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。・・・(本件が,その場合に該当するかどうかは)株主自身により判断されるべきものである・・・本件(株主)総会において,本件議案(敵対的買収防衛策)は,議決権総数の約83.4%の賛成を得て可決された・・・上記判断は,・・・尊重されるべきである。したがって,・・・本件新株予約権無償割当ては,株主平等の原則の趣旨に反するものではなく,法令等に違反しないというべきである。