景品表示法違反② 課徴金制度の導入と初適用事例
1 大和銀行事件判決の中で生まれた概念
1995年大和銀行のニューヨーク支店の行員某が、アメリカ国債の簿外取引で大和銀行に約1100億円の損害を与えるという事件が発覚し、それを知った大和銀行の株主から、大和銀行の取締役に対し、株主代表訴訟を起こした結果、平成12年 9月20日、大阪地方裁判所は、取締役10名に合計800億円を超える損害賠償を命ずる判決を言い渡した。この判決の中で、裁判所は、会社の取締役には、次のような内部統制システムの構築義務があると判示した。
2 その内容
前記大阪地裁判決は、
「健全な会社経営を行うためには、
①目的とする事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスク、
②例えば、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスク等の状況を正確に把握し、適切に制御すること、
③すなわちリスク管理が欠かせず、
④会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する。
⑤そして、重要な業務執行については、取締役会が決定することを要するから(商法260条2項)、
⑥会社経営の根幹に係わるリスク管理体制の大綱については、取締役会で決定することを要し、
⑦業務執行を担当する代表取締役及び業務担当取締役は、大綱を踏まえ、担当する部門におけるリスク管理体制を具体的に決定するべき職務を負う。
⑧この意味において、取締役は、取締役会の構成員として、また、代表取締役又は業務担当取締役として、リスク管理体制を構築すべき義務を負い、
⑨さらに、代表取締役及び業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負うのであり、
⑩これもまた、取締役としての善管注意義務及び忠実義務の内容をなすものと言うべきである。
⑪監査役は、商法特例法22条1項の適用を受ける小会社を除き、業務監査の職責を担っているから、
⑫取締役がリスク管理体制の整備を行っているか否かを監査すべき職務を負うのであり、
⑬これもまた、監査役としての善管注意義務の内容をなすものと言うべきである。」
と判示し、内部統制システムの内容を明らかにするとともに、内部統制システムの構築義務は、取締役等役員の善管注意義務及び忠実義務の一態様であることを明らかにした。
3 内部統制システムをどう構築するかについては会社に広い裁量権が認められること
前記大阪地裁判決は、
「①もっとも、整備すべきリスク管理体制の内容は、リスクが現実化して惹起する様々な事件事故の経験の蓄積とリスク管理に関する研究の進展により、充実していくものである。
②したがって、様々な金融不祥事を踏まえ、金融機関が、その業務の健全かつ適切な運営を確保するとの観点から、現時点で求められているリスク管理体制の水準をもって、本件の判断基準とすることは相当でないと言うべきである。
③また、どのような内容のリスク管理体制を整備すべきかは経営判断の問題であり、会社経営の専門家である取締役に、広い裁量が与えられていることに留意しなければならない。」と判示した。