先進各国のコーポレート・ガバナンスの今
突然、見も知らない者からの電話。いかがわしい金融商品の売買取引の勧誘であった。というような経験を持つ人は多いと思われますが、今の世は、個人情報が、個人情報を種に利を図ろうとする者の手に集められ、個人本人の知らないところで、利用される時代になっております。
かつては、出版されていた紳士録を使った、詐欺事件もありました。しかしながら、紙を媒体とした個人情報(紙データ)の時代の被害は、それほど大きな影響を、社会に及ぼすことはなかったのですが、その後、個人情報が電子データになった以後は、個人情報が、時空を超えて、瞬時に、しかも大量に、移動することとなった結果、被害も広範囲に及ぶことになりました。
このような時代を迎えると、国家も、責任をもって個人情報を守る必要を認識し始め、個人情報を、法でもって保護する立法化へ進むことになりました。
世界で、最初に立法がなされたのは、1973年のスウェーデンの「データ法」ですが、続いてドイツが、1977年に連邦データ保護法(Bundesdatenschtzgesetz)を制定しています(弁護士後藤紀一著・ドイツ金融法辞典57頁参照)。
その後、1980年になって、OECD(経済協力開発機構)は、「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告」を出し、加盟各国に、個人情報保護法の制定を促すに至りました。
我が国は、2003年(平成15年)になって初めて、個人情報保護法が制定されましたが、前記OECDの勧告に遅れること実に23年、しかも行政機関個人情報保護法との二重構造という分かりにくい立法形式になってはいますが。
我が国の立法化が遅れた理由は、産業界が反対したからだとされています。
しかし、時代は、まさに急湍の流れを見るような変化を見せております。大量の個人情報(ビッグデータ)を活用して、一つの産業を創出することを目的とする動きが起こってきたのです。
ビッグデータとAI(人工知能)技術を用いて、国民に大いなる便益を与えると同時に、新しい産業、新しい時代を創出することは、国民の夢といってもよいものと思われますが、それを迎え入れるため、平成27年、従前の、「個人情報の保護」のみを規定した個人情報保護法を改正(平成29年5月30日から施行)し、①個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出、及び、②活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現をも目的とした個人情報保護法に改正し、個人情報の中から個人色を払拭した「匿名加工情報」を抽出し、これを自由に譲渡するなどの第三者提供を可能にしました。
一方、個人情報の保護も厚いものにし、個人情報の中から「要配慮個人情報」を類別し、これについては、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない(17条2項)こと、また、要配慮個人情報については、オプトアウト手続による第三者への提供(法23条2項)もできないことにしております。