コラム
労働 付加金の支払を命ずる場合の要件
2017年6月19日 公開 / 2017年6月22日更新
労働基準法114条は、「裁判所は、・・・第37条の規定(筆者注:時間外、休日及び深夜の割増賃金に関する規定)に違反した使用者・・・に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。・・・」と規定しています。
この場合の「付加金」を命ずる要件に関して、最高裁判所第一小法廷平成26年3月6日判決は、次のように判示しています。
労働基準法114条の付加金の支払義務は、使用者が未払割増賃金等を支払わない場合に当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所が付加金の支払を命ずることによって初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に同法37条の違反があっても、裁判所がその支払を命ずるまで(訴訟手続上は事実審の口頭弁論終結時まで)に使用者が未払割増賃金の支払を完了しその義務違反の状況が消滅したときには、もはや、裁判所は付加金の支払を命ずることができなくなると解すべきである(・・・)。
本件においては、・・・原審の口頭弁論終結前の時点で、上告人が被上告人に対し未払割増賃金の支払を完了しその義務違反の状況が消滅したものであるから、もはや、裁判所は、上告人に対し、上記未払割増賃金に係る付加金の支払を命ずることができないというべきである。
要は、使用者は、判決直前(事実審の口頭弁論終結時まで)に、未払残業代などを支払えば、付加金の支払いという制裁を受けなくてもすむということです。
関連するコラム
- 使用者のための労働問題 性同一性障害者に対する態度 2014-04-04
- 労働 減給処分における減給額の制限 2014-03-09
- 使用者のための労働問題 就業規則を変更したときの附則の書き方 2014-10-11
- 使用者のための労働問題 12 労働審判は便利② 2013-01-20
- 使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い 2014-08-25
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。