民法と税法 4 不動産取得税の性格
Q 当社は、役務提供を目的とした会社ですが、取引先開拓のため、取引先を紹介してくださった方に、一定の報酬(紹介料)を支払っています。
その紹介料は、紹介料支払義務(債務)が確定した日の属する事業年度の経費として損金処理できますか?
なお、役務契約期間は通常、10年を目安に結んでいます。
A
1 貴社の場合、紹介料は繰延資産になります。
すなわち、繰延資産とは、
法人税法2条24号で「法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう。」と定義され、
政令である法人税法施行令14条1項は、「法第2条第24号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(・・・)のうち次に掲げるものとする。
6号 前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの
ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用」
と規定され、
さらに、同条2項は、「前項に規定する前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出する費用のうち、その支出する日の属する事業年度終了の日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。」と規定していますので、
役務提供契約を結ぶ取引先を紹介してくれた人に対する、「紹介料」は、「支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの」である限り、施行令14条1項6号ホの「繰延資産」に該当するものと考えられるのです。
ですから、貴社の場合、紹介料は繰延資産になると思われます。
2 繰延資産の償却期間について
繰延資産の償却期間については、
施行令64条2号で、「第14条第1項第6号に掲げる繰延資産 その繰延資産の額(・・・)をその繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間の月数で除して計算した金額に当該事業年度の月数(当該事業年度がその繰延資産となる費用の支出をする日の属する事業年度である場合にあつては同日から当該事業年度終了の日までの期間の月数と)とする旨規定されています。
この規定を敷衍して、
法人税法基本通達8-2-1は、「令第64条第1項第2号《繰延資産の償却限度額》に規定する「繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間」は、この節に別段の定めのあるもののほか、・・・一定の契約をするに当たり支出した繰延資産についてはその契約期間をそれぞれ基礎として適正に見積った期間による。」とされていますので、
貴社の場合、役務契約期間が繰延資産の償却期間になるものと思われます。
3 結論
貴社の場合、紹介によって結ぶことのできた役務提供契約の期間が10年であれば、紹介料として支払った費用は、繰延資産として、10年間で償却することになりますので、全額を紹介料支払義務(債務)が確定した日の属する事業年度の経費として損金処理することはできないと考えます。
4 貸借対照表上での表示
なお、繰延資産は、貸借対照表の「資産」の中に、期末の残存簿価が書かれることになりますが、「紹介料」として支払った金額(の残存簿価)については、「未払費用」という勘定科目で書かれるものと思われます。