最高裁平成29・2・ 21決定と、「取締役会のほかに株主総会でも代表取締役を選定できる」旨の定款
1 目的規定に明示
個人情報保護法第1条は、法の目的を定めた規定ですが,改正法では、従前の字句の上に
「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の」
という言葉を付け加え、従前の字句である、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」に結びつけていますが、
ここからも、改正法の目的が、
①個人情報の適正かつ効果的な活用による、新たな産業の創出
②活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現
にあることは明らかです。
2 個人情報のうちの「要配慮個人情報」の保護を厚くしたこと
従前は「個人情報」の意味を、「生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」とされただけであり、かつ、個人情報の取得に本の同意は必要とされなかったのですが、
従前の個人情報とは別に、「個人識別符号が含まれるもの」も個人情報としたほか(個人情報概念の明確化)
個人情報を「要配慮個人情報」と,それ以外の個人情報に分け、
「要配慮個人情報」については、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない(17条2項)ものとして、個人情報の保護を厚くしました。
また、要配慮個人情報については、オプトアウト手続による第三者への提供(法23条2項)もできないことになっています。
参照:
法23条2項「個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データ(要配慮個人情報を除く。以下この項において同じ。)について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。」
この規定の中のカッコ書に注意。
3 「匿名加工情報」や「匿名加工情報取扱事業者」という概念が導入されたこと
(これが今後の産業になること)
個人に関する情報の山(ビッグデータ)から、個人色を払拭し、その余のデータを「匿名加工情報」としてしまえば、その情報を売買の対象にすることができますが、そのような匿名加工情報は、「21世紀の石油」と言うにふさわしく、その活用は一大産業を創出するものと思われます。
その一例として、内閣官房健康・医療戦略室策定にかかる「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(略称「次世代医療基盤法」)が本年5月12日交付されました(1年以内に施行の予定)が、膨大な国民に関する医療情報をデータベース化して、また、人工知能(AI)を活用した、ヘルスケア産業の進展が期待されるところです。
4 AIの驚異
最近、囲碁の世界一と言われた人が、人工知能(AI)に二連敗したというニュースを見ましたが、AI技術の進歩は驚くべきものがあります。今、AIのブレークスルー(飛躍的に発展させる意味)技術科学の進歩発展や、AIのディープラーニング(深層学習)に期待して、膨大なビッグデータを自動的に読み取り、そこから企業が欲する情報を提供する技術や商品が生まれようとしています。否、部分的には、実用化しているところです。
改正個人情報保護法の「匿名加工情報」に関する規定は、このようなAI技術による産業の創出を後押ししているのです。
5 ビッグデータの囲い込みに独禁法が適用されることになること
2017/6/5日本経済新聞は、公正取引委員会が、個人情報などビッグデータの独占を防ぐため、新たな指針を公にすることにしたことを報じました。
今後予想される、人工知能(AI)やIoT技術の更なる進化と普及が、ビッグデータを保有する企業に、競争上も優位な地位を与えるからです。