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コラム

住民監査請求があった場合の、監査委員の心構え

2017年4月17日

テーマ:地方行政

コラムカテゴリ:法律関連

Q 私は、某自治体の監査委員をしている者ですが、住民監査請求書を,受理すべきか,不受理とすべきか,補正を求めるべきかという判断の基準が分かりません。
なにか知恵を与えていただきたいのですが・・・

1 住民監査請求の要件
A 地方自治法242条は、「住民監査請求」に関する規定ですが、その1項では、
① 普通地方公共団体の住民は、
② 当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、
③ 違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、
④これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填てんするために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
と定められています。

2 具体的な判断基準
最高裁平成2年6月5日判決は、
① 住民監査請求においては、対象とする・・・当該行為等を他の事項から区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要し、
② また、当該行為等が複数である場合には、当該行為等の性質、目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き、各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示することを要するものというべきであり、
③ 監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合しても、監査請求の対象が右の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは、当該監査請求は、請求の特定を欠くものとして不適法であり、監査委員は右請求について監査をする義務を負わないものといわなければならない
と判示しております。

ですから、この最高裁判決を拠り所として、判断するとよいでしょう。
ただ、住民からの監査請求に対しては、この基準(要件)に適合しないからといって、直ちに不受理とするのではなく、補正を求め、補正がなされない場合に、不受理とすべきでしょう。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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