子のいない夫婦からの相続相談
1 欧米
遺言の権利を認めていた古代ローマ時代、個々の法律は他の法律との整合性を考えず制定されることが多く、法体系としては一貫したものではなかったようですが、6世紀に至って(このときは西ローマ帝国は滅んでいて東ローマ帝国のみ存続)、ユスティニアヌス1世の時代、法務長官を中心に、古代ローマ時代からの自然法および人定法、帝政以降の勅法を編纂させ、新たに法律を定めました。これら新法は、総称して「ローマ法大全」と呼ばれています。
そして、このローマ法大全は東ローマ帝国の基本法典として用いられ、12世紀には西欧へも伝わり、のちの西欧の各国の法典(特に民法典)にも多大な影響を与えたとされています。
そういう影響があったからか、西欧では、遺言が相続の中で重要な役割を演じているようです(なお、イギリスでは、19世紀から20世紀にかけては、遺言者の遺言の権利には何らの制限も課さなかった時代もあったことが、新版注釈民法(28)には書かれています。)
アメリカは、メイフラワー号によって北米大陸に渡ったイギリス人が建国した国ですので、当然、イギリスと同じような法文化が生まれたものと思われます。
1 我が国の遺言制度
これも新版注釈民法の受け売りですが、我が国も、古くから遺言による遺産の処分は認められており、8世紀には、藤原不比等らが撰定した「養老律令」で、遺言による遺産処分の権利が認められていたようです。
新版注釈民法には、明治以前、特に徳川時代は、「遺言相続主義をとっていたとすらいえるであろう」とまで書かれているほどです。
そして、現行法では、「遺言の権利」とはまでは言われませんが、広く「遺言の自由」が認められていることは周知のとおりです。