使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
最高裁平成14年2月28日判決を紹介いたします。
1 事実関係
(1)当時者の立場
使用者(被上告人)=不動産の管理受託及び管理受託に係る建築物の警備,設備運転保全等の業務を目的とする株式会社
被用者(上告人ら)=被上告人に技術員として雇用された従業員で、被上告人が管理を受託した各ビルに配置され,ビル設備であるボイラー,ターボ冷凍機の運転操作,監視及び整備,電気,空調,消防,衛生等のビル内各設備の点検,整備,ビル内巡回監視,ビルテナントの苦情処理,ビル工事の立会い,記録,報告書の作成等の業務に従事していた者
(2)勤務の実態
被上告人においては,労働時間に関する労働協約,就業規則の範囲内で,毎年,暦にあわせて年間,月間の労働時間,休日数を定めた「月別カレンダー」を元に、ビルの実情に応じて「ビル別カレンダー」を作成し、従業員は,これに基づいて作成された具体的勤務割である勤務シフトに従って業務に従事していた。
(3)賃金の内容
賃金は月給制で,基準賃金と基準外賃金によって構成。
ア 基準賃金 → 年齢に応じて支給される基本給,
職能に応じて支給される職能給,
勤続年数に応じて支給される勤続給,
役職に応じて支給される役名給,
資格に応じて支給される職務手当,
世帯の状況に応じて支給される生計手当,
被上告人が必要と認めた場合に支給される特別手当等
イ 基準外賃金 → 時間外勤務手当、
深夜就業手当,
泊り勤務手当,
休日出勤手当,
当直手当、
(4)仮眠時間の扱い
24時間勤務における仮眠時間は所定労働時間に算入せず、かつ,時間外勤務手当,深夜就業手当の対象となる時間としても取り扱われていなかった。
その代わり、「仮眠時間中に業務が継続または発生し,そのために与えられなかった仮眠時間は,賃金規定に定める時間外勤務手当を支給する。」との規定が設けられていた。
また、従来からも,仮眠時間中に突発作業が発生した場合,実作業時間に対し,時間外勤務手当及び深夜就業手当が支給されてきた。
(5)仮眠時間中の上告人らの義務
上告人らは,本件仮眠時間中,各ビルの仮眠室において,監視又は故障対応が義務付けられており,警報が鳴る等した場合は直ちに所定の作業を行うこととされているが,そのような事態が生じない限り,睡眠をとってもよいことになっている。上告人らは,配属先のビルからの外出を原則として禁止され,仮眠室における在室や,電話の接受,警報に対応した必要な措置を執ること等が義務付けられ,飲酒も禁止されている。仮眠時間中に警報が鳴った場合は,ビル内の監視室に移動し,警報の種類を確認し,警報の原因が存在する場所に赴き,警報の原因を除去する作業を行うなどして対応をし,また,警備員が水漏れや蛍光灯の不点灯の発見を連絡したり,工事業者が打ち合せをするために,仮眠室に電話をしてきたような場合も,現場に行って補修をする等の対応をすることとされている。