コラム
情報公開条例の誤解➁ 知る権利は,法と条例の制限内の権利なり
2016年12月1日 公開 / 2016年12月3日更新
Q 情報の開示を請求した住民に,公文書のコピーを交付した後,当該住民から,住民には“知る権利”があるのだから,自治体には,公開された公文書の内容に対する質問に答える義務があると言われました。自治体の職員には,そういう義務はあるのではないのですか?
A 知る権利があるから,公文書の開示請求が認められているのです。
それを超えて,公文書の内容について,質問する権利まで認められているわけではありません。
知る権利は,法律や条例で定められてはじめて認められるものなのです。
具体的は,「行政機関の保有する情報の公開に関する法律”や各自治体の「情報公開条例」その他の法令や条例で定められたものがその“知る権利”になるのです。
あなたは,市の公務員として,情報の開示,具体的には,公文書のコピーの交付はしなければなりませんが,直接の口頭又は文書による説明義務はありません。
各自治体の情報公開条例の目的は,「市民の知る権利を保障するとともに,本市の行う諸活動を市民に説明する責務を全うし,もって市民の市政への積極的な参加による市政の民主的発展に寄与すること」ですが,その具体的な内容としては,公文書の開示を受けるところまでで,公文書の内容に対して質問する権利まで認めているのではありません。
なお,もし,住民に,公文書に書かれた内容に対する質問権を認めますと,質問の範囲は際限なく広がり,質問がたんなる質問ではなく行政の政策に対する批判になり,是正を求める要求になっていきますが,そうなると,あなたが経験しているように,担当者が本来の執務ができないほどの時間がとられ,行政批判の矢面に立たされることになるでしょう。
要は,現在,あなたが経験している困難な状況は,法と条例を正しく理解できていない,あなた自身が招いたことともいえるのです。
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