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賢い事業承継の手順 3 自社株の譲渡又は移転計画の策定

2016年7月12日 公開 / 2016年7月15日更新

テーマ:事業の承継

コラムカテゴリ:法律関連

 事業の承継は,自社株の移転によってなされます。
これは,自社が,中小企業承継円滑化法の適用を受ける会社であろうと,そうでない会社であろうと,変わりはありません。
 自社株の移転には,次の方法があります。

1 生前贈与,売買,相続
① 生前贈与
➁ 売買
③ 相続
等です。
 これらの方法には,それぞれ一長一短がありますので,経営者は,その長を生かし,短を抑えるよう,自社株の後継者への移転計画を立案すべきです。

2 長短
① 生前贈与の長短
 長所: 税の負担が軽くてすむこと
 すなわち,贈与にかかる税金(贈与税)の実効税率(贈与額に対する贈与税の割合)を,相続税の限界税率(贈与額が課税遺産額に上乗せされた場合のその上乗せ額に対する相続税率。なお限界税率とは,当該納税者に適用される最高税率のこと))より低くなるようにして暦年贈与を繰り返えせば,税の負担が軽く,節税効果が生じます(相続時精算課税対象の贈与の場合は,この効果はありません。)。
 短所:遺留分侵害問題が生じやすい
 すなわち,後継者のみに多額の贈与をすれば,その贈与は遺留分算定の基礎財産に含まれるため,遺留分権利者の遺留分を侵害するリスク,したがって,遺留分減殺請求がなされるリスクが生じます。
(注:なお,遺留分に関する民法の特例制度については,別のコラムで解説します。)

➁ 売買の長短
長所: 時価で売買する限り,遺留分侵害問題は生じないこと
短所: 買主(後継者)に株式購入資金が必要になり,かつ,売主(経営者)に,譲渡益の20%の譲渡所得税が課せられること

② 相続(遺言による相続)の長短
長所: 後継者に自社を支配できるに足る株式を取得させることができること
短所: 多額の相続税が発生し,かつ,遺留分侵害問題が発生するリスクが生じること

3 自社株の移転計画は,長短や税負担を総合的に考え策定
(明日は,暦年贈与のメリットについて解説します。)

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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