建築請負契約における瑕疵認定の基準を定めた裁判例
Q 10年以上前に新築した木造家屋の所有者から,建築に使われた建築部材が仕様書に書かれたものと異なるのは,請負契約の瑕疵になるのだから,仕様書に書かれたとおりにやり直し工事をしてほしいと言ってきましたが,そうする義務があるのですか?
A ありません。
1 瑕疵の判断基準
仙台地裁平成23年1月13日判決は,請負契約における「瑕疵」とは,一般に完成された仕事が契約で定められた内容を満たさず,目的物について,使用価値若しくは交換価値を減少させるような欠点があるか,又は当事者間であらかじめ定められた性質を欠いているなど,不完全な点があるとされ,以下の3つの場合には瑕疵があると判断すべきであると判示しています。
①最低限度の性能について定めた建築基準法令(国土交通省告示,日本工業規格,日本建築学会の標準工事使用者(JASS)等を含む。)に違反する場合
②そのような違反がなくても建物が客観的に見て通常有すべき最低限度の性能を備えていない場合
③建築物の建築工事実施のために必要な図面及び仕様書からなる設計図書と合致しない工事が行われた場合で,不一致がごく軽微であり,目的物の価値,機能及び美観などに影響を与えず,注文者の意思に反することもないといえるような特別の事情のない場合
2 御相談の場合
本件の場合,①➁又は③のいずれかに該当する場合は,瑕疵になりますが,瑕疵担保期間が経過していますので,仮に瑕疵になる場合であっても,損害賠償義務は生じません。
3 瑕疵担保期間
請負人が負う瑕疵担保責任の期間は引渡後5年間です(民法638条1項・石造,土造,れんが造,コンクリート造,金属造等は引渡後10年)。
本件の場合,木造建物で建築引渡後10年以上経っているということですので,瑕疵担保責任は生じません。