民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲
Q 私甲は,乙に不動産を売り,その引渡しをし,所有権移転登記までしたのですが,乙から代金の支払いを受けませんでした。しかし,登記まで乙に移したことがあったため,譲渡所得税の申告をし,納税しました。
その後も,乙は売買代金を支払ってくれなかったため,私は乙との間の売買契約を解除しましたが,この場合,私が納めた譲渡所得税は返還してもらえるのでしょうか?
A 返還してもらえます。
それには,あなたは乙に対し,訴訟を起こし,不動産の返還と所有権移転登記の抹消登記手続を請求し,勝訴判決(裁判上の和解を含む。)を得,国税通則法23条2項(1号)に基づき,税務署長に対し,更正の請求をしなければなりません。
更正の請求というのは,税金額を算出する対象になる課税標準の額を間違えた場合(例えば,所得は1000万円なのに,2000万円と間違えた場合)又は税額を間違えた場合(例えば,税額は200万円なのに400万円と間違えた場合)によって,税金を納めすぎている場合の,納め過ぎた金額の還付を請求するために,その間違い部分を直すよう請求することをいいますが,更正の請求ができる期間は,申告の間違いの場合は,国税の法定申告期限から5年以内にすればよい(国税通則法23条1項.。なお,この期間は,平成23年11月30日に改正されるまでは,わずか1年でした。)のですが,あなたの場合,つまり,「後発的な理由による更正の請求」の場合は,裁判が確定した日の翌日から起算して2月以内にしなければ効果はありません(同法23条2項1号の「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して2月以内」に該当するから。)。注意しなければならないところです。