使用者のための労働問題 就業規則を変更したときの附則の書き方
1 分限処分
分限とは「身分保障の限界」という意味の,戦前にあった「文官分限令」からきた言葉です。その「文官分限令」というのは,官吏や地方公務員に対し,その責任のないことであっても,一定の事由があれば,降任や免職ができることを定めた法令ですが,ここから「分限処分」とは,公務員が一定の事由によりその職責を十分に果たすことができない場合になされる降任,免職等の不利益措置をいいます。
地方公務員法28条1項が「職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績が良くない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前二号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合 」
と規定しているのは,この分限処分のことです。
この分限処分は,民間企業における使用者と労働者との間でも,当然に,認められます。
分限処分の結果,重要な職務から,重要ならざる職務へ降格された場合,その職務に応じた給与しか得られないということもありますが,これは職能給の違いによるものである限り,やむを得ないものになります。
2 懲戒処分
懲戒処分とは,従業員の違法な企業秩序背反行為に対する制裁のことをいいます。通常の企業では,懲戒解雇,諭旨解雇,出勤停止,減給,戒告,訓告などが,制度化されています。
3 降格が懲戒処分の性格と分限処分の性格を帯びる場合があること
東京地裁平成26年1月14日判決は,セクハラ行為をしたGM(ゼネラルマネージャー。会社の業務全般を統括する地位)を,会社業務全般を統括するGMとしての適格性が欠けるとの理由で,平のマネージャーに降格し,それに伴い,給与が大幅に減額になったこと(22万円の減額)をやむを得ないものと認めております。菅野和夫著「労働法」第9版・439頁も,懲戒処分によらない降格処分の結果,賃金の低下をもたらすことを当然のこととしております。
ですから,同じ降任であっても,懲戒処分と分限処分が重なることもあるのです。