32 誤解するなかれ,建築条件付き特約を
必要は,発明の母,というべきか?
必要は,知恵の働きを招く,というべきか?
かつては中間省略登記をすることで,目的を果たしていたことが,それができなくなった後,もっとシンプルで分かりやすい,無論,合法的な,よい方法を考えついたものだ。
感心すること,しきりなり,という感じです。
(1)かつては中間省略登記でしていた
宅建業者(B)が、不動産を売主(A)から購入し、エンドユーザー(C)に売るとすれば、不動産の権利は、A→Bへ1回、B→Cへ1回、合計2回移転することになりますので、これをそのまま登記面に反映させると、登録免許税が2度かかり、不動産取得税も2度かかることになります。
そこで、かつては、せめて登録免許税が1度ですむようにと、中間にいるBを省いて、所有権は、直接A→Cへ移転したという登記(これを「中間省略登記」といったまのです。)がなされたものです。
しかしながら、中間省略登記は、登記面に実際の取引の姿を反映させていないことから、平成17年3月7日に施行された改正不動産登記法の下では、できないことになりました。
(2)「第三者のためにする契約」と「買主の地位の譲渡契約」ならば,2つの取引を1度の登記でできる
第三者のためにする契約というのは、買主(B)は、エンドユーザー(C)のために売主(A)から不動産を買うという契約を結ぶのです。エンドユーザーは、その時点で決めておく必要はありません。Cがまだ決まっていない場合は、AとBとの間で、将来Cが現れたときに、AからCに所有権を移転するという契約を結べばよいのです。
この契約は、①AとBとの間で、BがCのために不動産を買うという売買契約を結んだ後、②BとCとの間で、Cが①の売買契約による利益を受けることの意思表示(受益の意思表示)をBに伝える内容の契約によってなされます。
①のAとBの売買契約では、(ⅰ)BはCのためにAから不動産を買うこと、(ⅱ)CはBが指定できること、(ⅲ)Cが所有権の移転を受けることを承諾した時(受益の意思表示をした時))に不動産の所有権はAからCに移転すること、(ⅳ)AはCの受益の意思表示を受ける権限をあらかじめBに授与することがその内容になります。
また、買主の地位の譲渡契約というのは、①売主(A)と買主(B)との間において、BからCに買主の地位の譲渡があった場合Aはそれを承諾するという約款付きの売買契約を結び、②買主(B)がエンドユーザー(C)を探し出した後で、買主の法律上の地位をエンドユーザーに移転するという契約(第2契約)を結ぶことで完成します。
この第三者のためにする契約と買主の地位の譲渡契約の場合は、いずれも所有権はA→Bに移転することはなく、A→Cへ移転しますので、所有権移転登記は1回でできるのです。